陽菜×桐島先生
申し送りを終えて、何故か笑顔の前田君に見送られて泌尿器科のナースステーションに向かう。
普段は同じ病院に勤めているけど、別棟にある周産期医療センター内のNICU病棟に配属されているため、本館や第1病棟や第3病棟などはあまり来ない場所でもある。そんな中で。
「あれ? 春ちゃんの後輩ちゃんだったよね?」
そう声をかけられ、ひょこっと顔を覗かせてきた白衣を着た医師。
「はい。矢崎陽菜です」
「そうそう陽菜ちゃんだ。春ちゃんが"陽菜ちゃん陽菜ちゃん"って言ってた。インターンシップで来てたよね? うんうん。それで導尿処置補佐の後で泣いちゃった子だよね!」
「えっ、桐島先生!? それ、私でした?」
なんて事を覚えているんだろうか。この先生は……。できる限り頑張ってみよう。
「うん、陽菜ちゃんでしょ。春ちゃんが今でも語り継いでるよ。ウチの新人看護師に」
なんですと! 真悠子先輩なにバラしちゃってるの! 私の黒歴史。
「泌尿器科へ行くの遠慮したくなってきたんですけど……。行かないっていう選択肢は無いですよね」
「春ちゃんに怒られるよ。さっき"例の陽菜ちゃん来るよぉ"ってナースステーションで話してるの聞いたから」
それは何かの罰ゲームですかと真悠子先輩に言いかけたが、既のところで思い留まった。
「覚悟しておきます」
そんな話をしながら泌尿器科病棟へ向かっていると、あっという間にナースステーション前に到着する。