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悟×敏腕ナース!?

「笹井さんに声をかけてもらってると、穏やかな顔してるんですよね。退院したら笹井さんにお世話してもらえないからこの子も寂しがりますね」


 退院指導をしている時に、ご家族の方に言ってもらえた一言だ。


「光希ちゃん、もうすぐお家帰れまちゅねぇ。それまで悟君と仲良くしましょうねぇ」


 眉間にシワが寄ってる事が多かったが、最近は笑ってくれるようになった。急変したこともあったが、頑張って乗り越えてくれた。


 看護師になって、この病棟に配属となり、陽菜先輩に指導してもらいながらも独り立ちして頑張って来られたのは、先輩達の指導や見守ってもらえた事、それに担当の子が元気にお家へ帰っていく事に、やり甲斐を感じているからだ。


「笹井くん、手隙のときで良いんだけど、検査結果が届いたら連絡くれる?」


「了解です。速攻で連絡しますね!」


「助かるよ。ありがとう」


 鴻上先生にも、こうして頼りにしてもらえる。以前は、陽菜先輩や弥生先輩、前田先輩に頼んでいた鴻上先生だったから、俺も一人前に仕事できるようになったんだなと思っている。先輩達にはまだまだ追いついていないけど、先輩達の背中を追いかけていきたい。そんなことを思っていたら矢先。


「悟、藤堂先生からの差し入れ、置いておいたからね。休憩の時に食べてね」


 陽菜先輩の声が聞こえた。


「はぁ〜い! 陽菜先輩、ありがとうございますぅ」


「はいはい。カンファ行くからここ任せるよ」


「了解です。いってらっしゃい。あっ、看護記録忘れてますよ!」


「今取りに行こうと思ってたんだけど、ありがとう」


「陽菜先輩、お忘れさんなんだからぁ」


 陽菜先輩を見送って、ホッとしてると、またまた僕を呼ぶ声がする。


「悟、検査結果届いてるよ! 鴻上先生に連絡するんじゃなかったの!?」


 真智先輩の声が聞こえた。


──うおっ! そうだよ!


「真智先輩ぃ〜、今からすぐしま〜す」


 今日も病棟は緩やかな時間が過ぎている。


「そうだ。忘れないようにメモしておかなくちゃ」


 その様子を見て弥生先輩が僕に声を掛けてくれた。


「そうそう。メモしておけば忘れないからね。で、何をメモったの?」


「ええ〜? 弥生先輩見ちゃいます? まぁいいですけど。特別ですよ? じゃ~ん!」


 僕は弥生先輩に書きたてホヤホヤのメモを差し出した。


「なになに? 休憩……差し入れあり」


 メモを持つ手がプルプルと震え出す弥生先輩。


「こんなの書かんでいいわ! 仕事に関するメモをとりなさいよ!」


「お言葉ですが弥生先輩。差し入れというのは、僕にとって仕事のモチベーションなんです!」


「本当にお言葉でしかないわね! それより忘れてることあるんじゃないの?」


「と、おっしゃいますと」


「とっとと鴻上先生に電話! そういうのメモりなさいよ!」


 しぃ〜というハンドサインを弥生先輩に向けながら、悟は鴻上先生に電話をするのでした。


「……こ、こいつ」


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