真智先輩×翔真
お昼休憩を全員済ませて午後の業務を始める前に、看護記録のチェックをすることにした。
看護記録を取り出し開こうとすると声をかけられた。
「真智先輩、入り口に坂倉翔真さんって方がみえてますよ」
「はぁ、なんで翔真がこんなところに来るの?」
「真智先輩に会いに来たんじゃないですか」
「ありがとう。とりあえず行ってくるわ。ちょっと席外すわね」
「はーい、いってらっしゃい。ごゆっくり」
陽菜に見送られて入り口に向かって歩きだす。
「真智姉。こっち!」
私を見つけ、手を挙げて呼ぶのは弟の翔真だった。
「どうしたの?」
「俺、今日人間ドックだったんだよ。隣の健康推進センターで」
「そっか。お疲れ様。何か言われた?」
「特には言われてないと思う」
「なら大丈夫だね」
翔真は、何故わざわざこんな事を言いに来たんだろうか。
「それより、対応してくれた看護師の子、めっちゃ可愛いんだけど」
「陽菜?」
「今の子、陽菜ちゃんっていうの? 名前まで可愛い! ってか、紹介して」
「翔真、諦めな。陽菜ちゃんを狙うドクターに勝てっこないから」
──おいおい、翔真さんよぉ、ナンパしに来たんかい!
「何で? 陽菜ちゃんに気に入ってもらえるかもしれないじゃん俺」
「ないから」
──なに? この自信どこからくるの? そんな中、絶賛話題中のドクターが。
「坂倉さん、中に陽菜ちゃん居る?」
「はい、看護記録書いてましたよ」
「ありがとう」
そう言って颯爽と私達の横を通り過ぎていった。
「ねぇちゃん、さっき言ってたドクターって今の人のこと?」
「そうそう。藤堂大雅先生だよ」
「俺そろそろ帰るわ」
──自滅したね。陽菜ちゃんが翔真の奥さんになってくれたら嬉しいけど、あの先生からきっと陽菜ちゃんは奪えない。そんな予感が私の頭を通り過ぎた。
「あっ、あの人もかわいい」
「翔真! まっすぐ帰れ!」