医局×神隠し
「陽菜ちゃん、コレ医局で余ってたんだけど、良かったらもらってくれない?」
医局で持て余しているシュークリームをナースさん達にお裾分けで持ってきた。
「藤堂先生、わぁ、こんなにたくさん良いんですか?」
「もちろん!」
「じゃあ、休憩室の冷蔵庫に入れてみんなでいただきます。早速、ひとつは私の名前書いておこう」
嬉しそうにシュークリームを確保する陽菜ちゃんの姿は可愛く、癒される瞬間でもある。たまに医局で囁かれるシュークリームの神隠し。くだらない噂をする人がいるもんだと思う。神隠しというか、俺と鴻上先生が有り余っている差し入れのおやつをナースステーションへお裾分けしているのが事実なんだが、めんどくさいから放置している。岩崎先生がひとり騒いでいるようだが、いつか気がついてくれるであろう。
「陽菜ちゃん、こっちのダブルシューが美味しかったよ」
「えっ? あっほんとだ! 2種類ある。藤堂先生ありがとうございます。じゃあ、こっちにしよう♡」
──ふふ、可愛い。
「それじゃあ、医局に戻るね」
「はーい。ごちそうさまです」
医局に戻ると、鴻上先生に詰め寄る岩崎先生の姿があった。
「鴻上先生、ここに大量にあったシュークリームちゃん達知りませんか?」
──あー、始まった。放置しよう。
「あっ、藤堂せんせ〜、シュークリームの神隠しですよ! ここに大量にあったのに忽然と姿を消しちゃったんですよ。どこいったんですかね? シュークリームちゃん達」
──知ってるけど、めんどくさいな。
「鴻上先生、午後からのカンファレンスなんですけど……」
「えぇ〜、藤堂せんせ〜、スルーしないでくださいよぉ〜。医局で巻き起こる神隠しですよ!」
鴻上先生と笑いを堪えて、この成り行きを見守る。相変わらず、賑やかな医局に平穏は訪れるのか?




