永遠×皮膚科
「ひなぁ〜、来週の火曜日って休み?」
──ん? 何? このいきなりの質問。お兄ちゃん、もう少し説明あってもいいと思うんだけど……。
「日勤」
──ちょっとそっけなかったかなぁ。まっ、良いや。兄ぃだしね。
「えぇ〜、まじかぁ」
何で火曜日に私が日勤だったからと言って、ここまで落胆されないといけないんだろうか。
「にぃちゃん、肩におできができて、近所の皮膚科で診てもらってたんだけど、おできを除去して縫合してもらった方が良いらしくて、陽菜の病院に紹介状書いてもらって、予約が今日だったんだよ。それでさっき診てもらったら、来週の火曜日の午後から除去術してもらえる事になったんだけど……」
──あ〜、言いたいことわかってきた。
「それで?」
「ひなぁ、それでって。酷くない? 敏腕ナースな陽菜ならわかってくれるんじゃないの?」
──だからぁ、日勤って言ったよね? お兄様。
「付き添いじゃなくても良いなら良いよ。皮膚科の受付で付き添いの方は? って聞かれたら、周産期医療センターNICUで妹が看護師していて、今日は日勤でいます。って言えば良いんじゃない? 何かあったら病棟に連絡してもらって。そしたら行くわ」
──別に外来の処置室で、おできの除去術くらいで、いちいち妹を呼びつけないでよ。まぁ、局所麻酔使うから、何かあった時の保険だろうけど、わからなくもないけど分かりたくない。
「陽菜、おいおい、何かあったら遅いだろ。昔は陽菜、お兄ちゃんお兄ちゃんって俺の後ばっかりくっついていたくせに。それに大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになる! って可愛いこと言ってたのに。今は、その欠片さえない。お兄ちゃんは悲しいぞ」
──でたでた。昔の私の失言。覚えてませんけど。お兄ちゃんの妄想じゃないんだろうか。願望が幻となって記憶を改ざんしたんだな。そうに違いない。
「明日、お兄ちゃんのカルテ確認しておくね」
「はっ? お前、NICUだよな? わざわざ皮膚科に行って俺のカルテを覗いて来なくて良いって。恥ずいじゃん」
「えっ? 何言ってるの? わざわざ皮膚科に行かないよ。NICUのパソコンから全科のカルテ見られるんだけど」
「はっ? プライバシーってもんがないのか?」
「お兄ちゃん、診察券よ〜く見た?」
「えっ? 見てないかも」
でしょうね。普通の人は大体そうだもんね。
「診察券の裏側、よく見て。『この診察券は全科共通永久使用です。大切に保管してください』って書いてない?」
「うわっ、書いてある。ちっこい字で。これじゃあ、じぃちゃんばぁちゃん読みづらいよ」
「お兄ちゃん、今はその話はどうでも良いよ」
「あっ、そうか? 仕方ないなぁ」
「だから、お兄ちゃんの名前、生年月日、受診科が分かれば、何処にいてもカルテは探せて見られるんだよ。例え登録番号がわからなくてもね」
「陽菜、凄いな」
──今時、そんなに驚くことではないと思うけどね。
「来週の火曜日、気にしておくから、診察券出す時に付き添いの件は、病棟コールで対応してもらって」
「わかった。ありがとうな。陽菜」
「うん。またね」
きっと当日も、兄から連絡あるんだろうなぁと覚悟した。




