陽菜×無関心
「陽菜先輩、本館の入院棟で地元の野球選手の慰問があるらしくて、あっちの看護師たち大盛り上がりしてるみたいです」
「そう。全く関係のないNICUでは悟が大騒ぎしてるけどね」
今のこの時期になると、レギュラーシーズンを終えたスポーツ選手による慰問が行われる。病室を廻り長期入院患者を励まし、病気と戦ってもらうのを狙いとして毎年行われている。
「えぇ〜、陽菜先輩、地元愛はないんですか? 地元チームのサッカー選手や野球選手ですよ!」
「そうみたいだね。誰か知らないけど」
「うわっ、それは酷いわ。それじゃあ、野球選手で知ってる人の名前言ってみてください」
「◯◯翔◯!」
「陽菜先輩、それは◯ジャーリーガーでしょ。地元チームの選手は?」
「中村さん? 林さん?」
「誰ですか? 適当に言ってますね」
「バレちゃった。あはは」
興味のない事に詳しくなくて悟に若干バカにされつつ、今日も通常運転のこの病棟。
「ちょっと良いかしら」
依元師長がナースステーションへと歩きながら声をかけてきた。
「今日スポーツ選手が慰問してるのは知ってるかしら?」
「はーい! 知ってます!」
悟が我先に手を挙げてアピールする。
「周産期医療センターも立ち寄られるって事なので、はしゃぎすぎないでくださいね。笹井さん」
「師長、どうして僕限定なんですか?」
「他に心配しないといけない人ってこの病棟にいるかしら? 真智さんも陽菜ちゃんも全く無関心だし、あなたくらいでしょ」
依元師長もサッカー観戦お好きでしたよね? と思いつつ真智先輩と顔を見合わせ苦笑する。
しばらくして医局長が数人引き連れて、何やら説明しながら和やかに入って来られた。
「こちらがNICU病棟です。24時間常に看護しており、何かあればすぐに対応できる精鋭揃いの職員を配置しています」
医局長、言い過ぎでは? そこまで褒められても何も出ませんよ。
「陽菜先輩、僕達、精鋭部隊なんですね」
「悟、調子乗りすぎ。社交辞令的な会話にいちいち真に受けていないで仕事しなさい」
「陽菜先輩、選手かっこいいですね。プロの選手ですよ。うわぁ〜」
一緒だと思われたくないなぁ。悟を野放しにしておくのも不安だけど、先輩たちに託して放置しよう。私はバイタルチェックをしに向かった。
悟と師長は落ち着きがなく、視線の先には選手をロックオンしている。
選手の皆さん、試合よりやりにくそうだなぁ。私が審判なら、依元選手と悟選手に、ご退場いただくことだろう。
「さぁ、お仕事お仕事」




