陽菜、悟×コードブルー
全館に響き渡る緊急コール。
「コードブルー、コードブルー。救急外来に……」
わっ、コードブルーだ。今、ウチの病棟は……辺りを見回す。ナースステーションにいた全スタッフで、残る人とコードブルー対応に向かう人選を真智先輩が素早く行う。
「陽菜は悟を連れてコードブルー対応。向かいながら悟に心掛けや、やるべきことを伝えて」
「了解です」
「悟、初めてのコールだと思うけど、例え何もできなくても今回行くことによって、何かを学べるはず。経験を積んでおいで」
「わかりました」
悟を連れて本館1階の救急外来へと向かう。現場は既に大勢の医師や看護師が集まっている。救急車がひっきりなしに到着しては、患者を運び込んでくる。救急医長が現場の指揮をとる。近くの工事現場で事故が起きたようで、作業服を着た人達が苦痛に顔を歪めていた。
災害ナースの資格を持つ看護師が、ホワイトボードに情報を書きながら応援に来た看護師に指示を出していた。
「NICUからの応援の矢崎と笹井です」
所属を加味して担当を振り分ける。一刻も早い対応が望まれる現場にふさわしく、かっこいいなぁと感じた。
「それじゃあ、緑タグの患者の聞き取りなどお願いできる? 急変がみられたらすぐにドクターにコールして」
「わかりました」
準備されていた簡易的に書き込めるカルテを持ち、緑タグの患者の元へと向かう。悟もカルテを持ち、真剣な面持ちで緑タグの患者に向かった。
「看護師の矢崎です。今、痛いところ、不調な箇所はありますか? 服用されているお薬などはありますか?」
既往症なども確認していく。ドラマとかで観たことはあっても、自分がこういう現場で処置に当たるとは想像もしていなかった。ひとりひとりに時間をかけてはいられない。患者に聞き取りをしながら顔色をチェックする。気になる患者には脈を取るなどして確認していく。近くの処置室では、血ガス、血算、生化とドクターの声が響いている。緊急な事が伝わる。
数十名のナースで緑タグの患者の聞き取りを終えると、ホワイトボードのところにいる現場を指揮している看護師に声をかけにいく。
「緑タグ患者の聞き取りを終えました。急変などはなく、一通りの消毒などの手当は済んでいます」
「ありがとう。緑タグの患者を近隣の病院へ搬送の準備が進められてるから、ドクターのフォローお願いできる?」
「わかりました」
悟とドクターのフォローにつく。ドクターの指示で処置フォローをしたり、診察のフォローをしたりと、とにかくできる限りの事を頑張った。どれくらいの時が過ぎたのだろうか。騒然としていた救急外来が平穏さを取り戻した。