陽菜×ハロウィン
「陽菜先輩、trick or treat」
目の前でニコニコして手を出している悟。
「何? 忙しいんだけど。お菓子なら休憩室にセンター長からの差し入れがあるよ」
「いやいや、陽菜先輩。夢がないです。もっとハロウィン楽しみましょうよ」
「悟、今度は陽菜相手にまだ遊んでるの?」
弥生先輩が、救世主のように颯爽と現れた。
「嫌だなぁ。弥生先輩ったら。僕、真剣にハロウィンを楽しんでるんですよ」
「はいはい。もうすぐ回診の時間だよ。準備できてるの?」
「それは、もう。陽菜先輩がしてくれました」
「悟、あんたねぇ」
いつもの平穏な病棟だなぁ。今日も何事もなく過ぎてくれたら良いなぁと思う。そんな時、師長の場違いな雰囲気が漂う。
「おはよう。お菓子食べてくれないとイタズラしちゃうわよぉ〜」
ナーシングカートにお菓子が入っているであろう段ボール箱を乗せて、ナースステーションに入ってきた依元看護師長。何をどこから突っ込んで良いのか、もう放置しようと内心思っていると、待ってましたと言わんばかりの悟が。
「たっべま〜す。師長大好きです! だから僕にイタズラはやめてください」
「悟、自分だけ逃げないでよ」
「師長、いただきます」
なんだかんだと、私達を気にかけてくれる依元看護師長なのだなぁと感謝している。
「悟。あんたも午後の回診されなさい。きっとどこかおかしいから」
「弥生先輩ったら、何言ってんですか。これが通常運転なんです」
「だから心配だって言ってんでしょうが!」
弥生先輩の一言にナースステーションが笑いに包まれた。




