陽菜×出会い⑤
「陽菜ちゃん、どうしてストーカーみたいな事になってたの?」
キッチンカーで注文して出来上がるのを待っている間に、藤堂先生に聞かれた。私は売店であった事を詳しく話した。
「怖い思いをしたね。たまにね、話に聞くんだよ。医療従事者の彼女を持つと自慢する単純な男の話とか、こちらから見てる限りだけど、ああいうタイプは陽菜ちゃんはやめておいた方がいいかもね」
「私、はじめからお付き合いするつもりも仲良くなるつもりもありませんでしたから。藤堂先生を見かけた時は神様現れた! くらいの感覚でしたから」
「何? 俺、陽菜ちゃんの神様になれちゃったの?」
「はい! それはもう。藤堂先生に足向けて寝られないほどです」
「それじゃあ、抱き枕とか腕枕にする?」
「藤堂先生。こう言うこと他のナースに言ったら、本気にされますよ。それこそストーカーされますよ。気をつけないとダメです」
他愛もない会話をしていると、程なくして商品が出来上がり、藤堂先生が受け取ると、職員が良く利用する中庭へと移動することにした。その途中で、さりげなく宇多川さんの隣を通ろうと藤堂先生に言われ、声をひそめて横を通った。
「颯司、ばぁちゃんの具合どうだったんだよ」
「あぁ、すぐ退院できるっぽい」
「そっか、良かったな。でも、家だと大変じゃね」
「親は無関心だしな。介護なんて絶対しないだろうな」
「施設もすぐには入れないだろうしな」
「俺、さっき売店でさぁ、看護師とお近づき案件あって付き合ったら介護してくれそうじゃね?」
「看護師ってお前。悪いやつだなぁ。彼女じゃなくて介護者じゃんそれ」
「おとなしそうなタイプだった」
「そう言う目的ならやめておけよ。相手が可哀想だろ」
やっぱり、はじめから嫌な感じがしたのはこれだったんだ。これからも絡まれたら嫌だなぁと思っていると、横にいた藤堂先生が。
「その話題の看護師って俺の彼女のことかな?」
急に声をかけられてハッとしたふたりがこちらを見て、ヤバイという顔をした。
「悪いけど、介護が必要なら他を当たってくれない。俺の彼女を介護職員のように扱う企みを偶然聞いちゃって放っておけないから」
「あの……」
「この子にこれから付き纏わないって誓えるなら、このまま何もなかったと思ってあげる。そうでないのなら相談できるところへ話を持ち込むけど? 宇多川颯司さん」
「えっ、あっ……いや」
「颯司、素直に聞いておけ。無理やりはヤバイし、彼氏持ちならお前に勝ち目はない」
「わかった」
2人の会話に藤堂先生がダメ押しする。
「信じて良いのかな? 彼女に付き纏うようなことはやめてくれると思って良いのかな?」
「はい。可愛かったし、看護師だから、祖母の面倒を看てくれたら心強いなと思ったので……。すみませんでした」
「わかった」
藤堂先生はそう言うと、私の背中に手を置いて、前に進むように促してくれた。
「それじゃあ、行こうか。ご飯にしよう」
「藤堂先生、ありがとうございました」
「どういたしまして。俺、陽菜ちゃんの神様だから。あはは」
しばらく手首の打撲で、思うように働くことはできなかったが、ようやく五条先生の許可も出て、普段通りに働ける事になった。今回の件で、改めてこの仕事に、このメンバーで働けることを誇りに思う。




