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陽菜×出会い④

 真智先輩に勧められて、少し早いけど休憩に入ることになった。手首も痛かったしちょうど良かったと内心思いながら、しかし、お腹は空いていなかったので、社員食堂ではなく売店へと向かった。


 ウチの病院の売店は、品揃えが良いので職員も良く利用している。ここで買って中庭で休憩している職員もよく見かける。私も今日はそうしようと思っていた。

 

 まだお昼には早いため、それほど店内は混んでおらず、ゆっくりと店内を見て回れた。休憩室からフィナンシェをもらってきたから、飲み物を選ぼうと移動したその時だった。後ろから来た男性がペットボトルのお茶を取ろうと私の前を横切った際、その人が持っていた鞄が私の右手首に当たった。


「痛っ」


 思わず声が出てしまった。


「大丈夫ですか。申し訳ない」


 自分の持っていた鞄が、私の包帯の巻かれている部分に当たっているのを目視して謝罪の言葉を繰り返してきた。


「怪我をなさっているところに、本当に申し訳ない事をしました。大丈夫ですか? 診察してもらった方が良くないですか? 僕のせいで本当に申し訳ない」


「いや、大丈夫ですので。お気になさらず」


 それぞれ目当てのものを手に取りレジへ向かう。彼は先に会計を済ませると、入り口で私が来るのを待っていた。


「あの、僕はこういう者です」


 そう言って名刺を差し出してきた。深く関わるつもりが無かったので、名刺はもらわず大丈夫なことを告げて立ち去ろうとしたが後をついてくる。病棟に戻る事もできず仕方ないので中庭へと足を進めた。


「僕、宇多川うたがわ颯司そうしって言います。ここの看護師さんなんですよね?」


「そうです」


「お名前をお伺いしても?」


「矢崎です」


 こういうのに慣れていないので、社員食堂へ行かなかったことを今になって後悔した。


「そろそろ戻ります。怪我のことは、先程のことと関係ないので本当に気にしないでください。それでは失礼します」


 飲もうと思って買ったカフェオレだったが、一口も飲むことなく中庭を後にした。しかし宇多川さんは、まだ私の後をついてくる。本当にやめて欲しい。すると、天の助けか藤堂先生が前を歩いていたので、宇多川さんに。


「それでは失礼します」


 そう声をかけて、藤堂先生の元へ走った。


「藤堂先生、お疲れ様です」


「おぉ! 陽菜ちゃん。どうした?」


「後ろにいる人にしつこくされて困ってます。このまま藤堂先生にお供してもいいですか?」


「もちろん良いよ。売店で済ませようと思ってたけど、せっかくだから外へ出ようか」


「あっ、今日キッチンカーくる日でしたね。私利用したことないです。いつも忙しくて。今日は手首怪我しちゃって、早めに休憩入っておいでって言ってもらったので」


「手首どうしたの?」


 私は朝の出来事を簡単に説明した。外科病棟で診察を受け、打撲だったことなどを話しながら歩いていると、キッチンカーの並ぶ広場に出た。すると、ベンチに座わる宇多川さんが、誰かと話し込んでいる姿があった。


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