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陽菜×交換研修

「今日から3日間、交換研修でこちらの病棟で勉強をすることになった、矢田やだ美南子みなこです。看護師歴9年ですが、NICUは初めての病棟ですので色々と学ばせてください。よろしくお願いします」


 初日は私の指導看護師でもあった真智先輩が指導にあたっていた。


「真智先輩、ちょっとイライラしてるね」


「9年目でアレは酷くない?」


 弥生先輩や田上先輩が、ヒソヒソ話している。その会話を聞き、真智先輩と矢田看護師の様子を見てみる。この研修の参加はどうやって決まったのだろう。自主的とは思えないような態度に、早くもナースステーション内の雰囲気が悪くなる。


 

 

 そして2日目の今日は、指導看護師の資格を持つ私に矢田さんの指導を任せられた。矢田さんは、3つ歳上の先輩看護師だけど、要領が悪いのか分かっていないのか、無駄な事ばかりに時間をとられ、全く仕事が捗らない。教えたいことの半分も進まない。それでも先輩だけど研修だしと思い直し、指導に当たる。担当する患者は「低出生体重児」「極低出生体重児」「超低出生体重児」である。研修に来たからには少しでも覚えてもらいたい。厳しいかもしれないけど、命を預かる現場に先輩も後輩もなく、私は指導者なのだと自分に言い聞かせる。


「矢田さん、今から明日退院の七瀬ちゃんの沐浴をします。その時に体重などの身体測定をしてもらいますね」


「退院決まってるのに、わざわざ身体測定なんて必要なんですか?」


「そうですね。ここの子達は小さく生まれたので体重増加がとても大切なんです。例え明日退院でもきちんと測定して看護記録に記しておきます」


「結構、面倒なことするんですね。一般病棟では、退院決まっていたらENTって記して終わりですよ」


「そうなんですね。でもここは一般病棟ではなくてNICUですから、ここでのやり方を学んでより良い研修にしてください」


 一から十までこのような調子なので、いったい何を学びに来たのだろうとモヤモヤしてしまう。明日の指導はできれば私ではありませんようにと祈るのみ。そして、願いは成就したようで、翌日は弥生先輩が担当となった。


 依元看護師長が、矢田さんの配属先病棟の師長に、研修報告書を書いているのがチラッと見えた。『意欲がなく学ぶ姿勢が好ましくない』うわっ。はっきり書くのね。


 嵐のような3日間が過ぎて、研修に行っていた前田君が戻ると、矢田さんも配属先へと戻って行った。


 その日の休憩時間は、矢田さんの話題で持ち切りとなった。


 前田君だけが知らない矢田さんの話に。


「矢田さん、いったい何したらこんなふうに言われるの」


 何をしたっていうか、何もしてないっていうか、次はないというか。きっともうNICUには来ないことだろうと私は思った。


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