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陽菜×兄⑤

「ねぇ、陽菜ちゃん」


 私の隣で食べていた渡辺さんが話しかけてきた。


「はい」


「ちょっと聞いても良いかな?」


「えっ?何でしょう」


「私さぁ、生理痛なんて縁がなかったんだけど最近生理痛に悩まされ始めちゃって、陽菜ちゃん生理痛ってどんな感じ?」


「ありますよ。月経痛。経血の多い2日目に市販薬で対処してますけど。一度だけ仕事中にどうしても痛みが強くて耐えられなかった時に婦人科のドクターに診察してもらって薬を処方してもらいました」


「そうなの。市販薬ってどんなの?」


「イブプロフェンとアセトアミノフェン含有のこれです」


 そう言いながら私が使用している市販薬を見せた。


「あー、よく見るわこれ。知ってる」


「今まで無かった月経痛が酷く感じられるのなら早めに婦人科受診して診察してもらった方が良いですよ」


「えっ、私って病気なの?ただの生理痛だよ」


「経血が増えたとかいつもと違う症状があったら受診した方が良いと思います」


 っていうか、ご飯食べながらするような話ではないと思うけど、私が医療従事者とわかると、こうして自分の身体のことを相談される事がある。先輩が言っていたのはこう言うことかぁと実感した。


「渡辺先輩、陽菜に病気相談してもだめですよ。医師ではないんですから」


「永遠、女同士の会話に入ってこないでよ」


 渡辺さんと兄が話し込んでいると、その間を縫って二階堂さんが会話をしてくる。


「陽菜ちゃん、食べてる?」


「はい。頂いてます」


「ちゃんとお肉食べてる?また永遠に注意されるよ」


「あはは、そうですね。頑張ります」


「陽菜ちゃん、肉は頑張って食べるようなものではないよ。そういえば陽菜ちゃんって何科で働いてるの?」


 二階堂さんが私に話しかけると、筒井さんと岩本さんも私の話に食いついてくる。


「周産期医療センターのNICU病棟です」


「周産期? あれ?なろう大学附属病院でしょ?」


 兄が迎えに来てくれた時に一緒に居た筒井さんが、不思議に思ったようだ。


「合ってますよ。なろう大学附属病院に入職しましたから。なろう大学附属病院には「なろう大学附属病院健康推進センター」と「なろう大学附属病院周産期医療センター」が併設してますから。私はその中で周産期医療センターに籍を置いてます」


「ねぇねぇ、NICUって?」


 筒井さんが突拍子もない質問をしてきた。


「新生児集中治療室です。小さく生まれた新生児や生命の危機が迫っている新生児などが入院する病棟です」


「陽菜ちゃんの希望先だったの?」


「はい。小さく生まれた子の生きるお手伝いがしたかったんで迷わずNICUを希望しました」


 しばらくは珍しいのか私の話で盛り上がっていたが、そのうちに相談という名の自身の身体の不調を話し始める。


「寝つきが最近悪くてさぁ、朝スッキリしないんだよね」


「…………」


「亮平、なに?寝られないの? 酔っ払って寝たらぐっすりでしょうよ」


「それは蓮だけでしょ」


「えぇ〜、亮平酷くない?」


「お前は悩みなさそうだもんな。羨ましいよ」


「お前ら陽菜に変な話してないよな」


 渡辺さんとの話に決着が着いたのかこちらに参戦してきた兄。


「みなさん、体調不良は看護師では診断できません。医師に診察してもらってくださいね」


「陽菜?なに?陽菜診療所でも開いてたの?」


「先輩看護師も似たような経験あるって言ってたよ。先輩は合コンだったらしいけど、自己紹介終わって看護師ってわかった瞬間話が自分の不調の相談話や身内に何かあったら怖いものないねとか言われて恋人候補じゃなくて看護師を求めてるみたいだったって」


「うわっ、最低な合コンに参加したね陽菜ちゃんの先輩」


「ちょっと待て陽菜、お前参加してないだろうな」


「行かないよ合コンなんて」


 そう言ってからふと先日の、異病棟交流会を思い出したけどアレは合コンではないと思い直す。なんだかんだと賑やかな兄と兄の友人との食事会は、騒がしく過ぎていった。


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