陽菜×兄②
弥生先輩が、ニヤニヤしながら隣に来ると、私を見つめて話しかけてくる。
「ひぃ〜な〜ちゃん、誰かなぁ。今のイケメンさんは?」
「えっ? イケメン!? そんな人どこかにいましたか?」
「またまた照れちゃって。今話してたイケメンさんよ。彼氏なんでしょ?」
「えぇ〜! 陽菜ちゃん彼氏来てたの!? 見逃したぁ!」
私達の話を聞いていたのか、真智先輩が声をかけてきた。
「彼氏はいませんよ」
「じゃあ今のはだぁれ? 陽菜ちゃん」
「兄です」
ふたりの先輩が食いついてきた。
「陽菜ちゃんのお兄ちゃんってイケメンじゃん」
「ねね、彼女いるの?」
「普通です。彼女は知らないです。離れて暮らしているので」
「お兄さん、何してる人?」
なんか、グイグイくる先輩ふたり。
「製薬会社で営業だったかな」
「なんで帰しちゃったの?」
えぇ〜。何で私怒られてるの? おかしくない? しかし、なんだかんだで平和な病棟だと思う。申し送りも終わり、日勤帯の看護師から夜勤帯の看護師へと引き継がれた。
お兄ちゃんに連絡入れなくちゃ。アプリを開き、お兄ちゃんを呼び出すと、文字を打ち送信する。さぁ着替えようと思ったと同時に、スマホの着信音が鳴る。アプリを開き確認すると。
(お疲れ〜。病院横のコンビニの駐車場においで〜)
早っ。お兄ちゃんいつから居るんだろう。まっ良いか、ご飯ご馳走になりにいこう。
ただの食事会で終わらないことを後から嫌というほど味わうなんて、今の私にはわからなかった。




