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陽菜×異病棟交流会①

 真悠子先輩に連れてこられたのは、最近人気のお店で雰囲気が良く、女子会で来店してお喋りしながらお酒や料理が楽しめるところだった。真悠子先輩は、スマホの画面を見ながら何やら操作をしている。


「ここって、最近人気ですよね? 雑誌で取り上げられてましたよね。それに、病棟の先輩も話してましたもん。お酒も色々種類があって、お料理もシェアして食べられて、飲み会にはもってこいの場所だって豪語してました」


「そうなんだよね。循環器の同期の子に良かったって聞いて行ってみたくなったんだよね。それにスポンサーさんもいるから遠慮要らないし」


 真悠子先輩が、何やらサラッと聞き流してはいけないことを言ったような気がする。


「真悠子先輩と2人なんじゃないんですか?」


「えっ? 私そんなこと言った!?」


「いや、言ってませんけど違うんですか?」


「もちろん! 今日はねぇ、異病棟交流会だよ。あっ、もうみんな来てるって。急ごう」


 真悠子先輩は、私の腕を掴んで迷うことなく店内をスタスタ進んでいく。


 異病棟交流会とかかっこいいこと言ってますけど、ただの飲み会なんじゃないんですか? 真悠子先輩! ってか、看護師じゃない人もいるのはどういうことですか!? それに同期もいるじゃん! 何この集まり。何この団体様! 10人以上いるじゃん! ふいに頭の中でドラマでよく耳にする「この中にお医者様か看護師さんなど医療関係者の方はいらっしゃいませんか?」って台詞が頭をよぎった。でもそうなったら最強メンバー揃ってるじゃん。と執筆の神様が降りてきた!? なんて勝手に妄想して盛り上がっていた。そんな場面はなかなか遭遇しないけどね。


「春ちゃん遅いよ」


「ごめんごめん。陽菜捕まえてきたから許して!」


「ゆるすぅ〜」


 なに? もう酔っ払ってるのか? いや、まだグラスは並んでいない。ただの水でこうなれるのか? お安い酔っ払いだなぁと内心思う。何故かど真ん中の席がふたつ空いていてそこに真悠子先輩と並んで座ることに……地獄だぁ。


「まず注文しよう。飲み物教えて、打ち込むから」


「黄島、私ビールね。陽菜は、何にする?」


 真悠子先輩が注文を済ませ私にも聞いてくれる。あの召使いみたいに真悠子先輩に逆らえない人、黄島さんっていうんだぁ。あっ、注文しなくちゃと我にかえる。


「キウイチューハイにします」


「陽菜は相変わらず可愛らしいものを頼むよね」


「陽菜ちゃんのキウイチューハイオッケーだよ!」


 真悠子先輩と話してたら聞いていたようでささっと注文を打ち込んでくれた。残りの人たちのオーダーも通してくれたみたいで飲み物が届くまで自己紹介となった。


「まず皆様お集まりいただきありがとうございます。泌尿器科ナースの春海真悠子です」


 真悠子先輩から時計回りに自己紹介が始まった。ってことは私がいちばん最後かぁ。


「泌尿器科医の桐島湊です。よろしくお願いします。陽菜ちゃん、さっきぶり」


 そう言って手を振ってきた桐島先生。


「桐島先生ナンパは後からにしてください」


 真悠子先輩のひとことに笑いが起きるが、私ひとり笑えない。


「真悠子大先輩に毎日こき使われている泌尿器科のイケメン看護助手の黄島きじま朔夜さくやです」


 この子勇者だなぁ、そんなこと言って明日から知らないからね? と、内心やっちゃったなこの子と思う。


「朔太郎、私の教え方がまだまだ甘いみたいだね。しっかり教育するから感謝しなさいよ。それとイケメンは言い過ぎだからね」


 あーあ、ほらね。やらかしたわ。朔太郎、頑張れ。ってか、なんで朔太郎? 朔夜じゃないの? 後で確認してみよう。


「真悠子と同期の外科ナースの花宮はなみや八重子やえこです。よろしくお願いします」


「八重子先輩の後輩で、陽菜と同期の外科ナースの荒井あらい妙子たえこです。よろしくお願いします」


 ってか、何でここに妙ちゃんがいるの? 聞いてないんだけど! 


「理学療法士の羽山はやま優斗ゆうとです。よろしくお願いします」


 自己紹介がどんどん進んで、既に半分くらいの人がわからなくなってきた。まっ、いいかっ。美味しく食べてストレス発散しよう。そんなこと考えていたら私の順番がきた。


「真悠子先輩の大学時代の後輩で、周産期医療センターNICU病棟の矢崎陽菜です。今日は内線で真悠子先輩に呼び出されて泌尿器科ナースステーションに行ったら、気づいたらここに連れてこられました。よろしくお願いします」


 事実を伝えなくてはと思い、暴露したら同期の妙ちゃんが。


「陽菜、私と同期って忘れたの? ちゃんと言ってくれないと寂しいじゃん」


「陽菜ちゃんも、僕と同じで真悠子先輩の小間使いなんだね。仲間だね。よろしく!」


 いやいや、ひとりが言ったらわかるやん! 妙ちゃんが言ったんだからみんな理解してない? 何回も言わなくて……ってか、私は真悠子先輩の小間使いではない。後輩で可愛がられているだけで決して黄島さんと同じではないと思う。


 自己紹介が終わる頃、各自の飲み物が運ばれてきた。しかも猫型の配膳ロボットで。飲み物がそれぞれ行き渡り真悠子先輩が。


「それでは皆様、グラスを持って下さい」


 各自それぞれグラスを持つ。


「今日もお疲れ様でした。今日はみんなで楽しく飲みましょう。それではかんぱ〜い!」


「乾杯!」


 席の近くの人同士でグラスを合わせる。


「ひなぁ、私とグラスごっちんは!」


 妙ちゃん、飲む前から絡まないでよ! 席遠いのに無理にグラス合わせんでも良いんじゃないの? と思うけど、妙ちゃんはジョッキを私に突き出している姿に思わず笑えた。


「妙ちゃん、お疲れ様」


 そう言ってグラスを合わせた。先が思いやられそうだなぁと思う。


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