藤堂先生×報告
陽菜ちゃんと話し合って今日病棟に報告することにしている。先週から少しずつ進めていた。まず初めに、医局長へ報告に行った。それから病棟の依元看護師長、そして色々と協力してくれていた鴻上先生には、病棟に話をする前に報告にいった。
ナースの申し送りが終わった時点で報告する時間をもらっているためナースステーションの隅で待機していた。申し送りが終わり、その場を離れようとする看護師達に依元師長が声をかけた。
「えっと、もう少し時間をもらって良いかしら」
その場にいる陽菜以外のナースが、何かあるの?とお互い顔を見合わせたりしていた。
「それじゃあ、藤堂先生どうぞ」
依元師長の呼びかけに頷き、中央に歩み寄り陽菜を呼ぶ。
「陽菜」
陽菜ちゃんは、頬を少し染め俯き加減で俺の横に並ぶ。陽菜ちゃんと視線を合わせ互いに頷き前に向き直る。
「この場をお借りしまして私事ですがご報告をさせていただきます。私、藤堂大雅は、矢崎陽菜と結婚を前提にお付き合いをさせていただくことになりました。ナースの皆さんには温かく見守って頂いていたのでご報告をさせていただきました。朝の忙しい時間帯にお時間をいただきありがとうございました」
ふたりそろって頭を下げて挨拶をした。俺はこの後、医局へ戻ったので、ナースステーションで陽菜が質問攻めにあっているであろうと思う。後から労ってあげようと思っていた。その時、廊下をバタバタと走る靴音が響いている。そして医局の扉が、ガラリと開いたかと思ったら
「と、と、藤堂せんせ〜、ドクターたちの癒しの天使の陽菜ちゃんを独り占めしたって本当ですかぁぁ〜。結婚式には呼んでくださいねぇぇ〜」
「岩崎先生、落ち着いてくださいね。廊下走ったらだめですよ。医局で騒いでもだめですよ」
「僕の癒しの陽菜ちゃんがぁぁ、藤堂先生のものになってしまうんですよ。なんで陽菜ちゃんなんですか?師長にしておいたら良いじゃないですかぁ〜」
そんな時、後ろから
「あら、岩崎先生、私が何かしら?」
「ふえっ、し、師長ぉぉぉ〜。あっ、トイレいってきま〜〜す」
毎度お騒がせな先生だなぁ。
「藤堂先生、陽菜のこと、これから頼みますよ。ウチの看板ナースなんですから」
「心得ております。ナースステーションの様子はどうですか?」
「藤堂先生のご想像通りだと思いますよ」
きっと今日の陽菜は、話題の中心の人になっているんだろう。今日は仕事終わりに労ってあげようと思った。長い1日の始まりだった。




