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13. 急転

 一瞬にして、部屋の中の空気が凍りついた気がした。王太子殿下も、王女殿下も、近くに控えていたジーンさんたちまで、皆が息を呑み一斉に私の顔を見ている。……いたたまれずに顔を伏せる。体が縮んでいきそうだった。王女殿下を庇って負った名誉の負傷ではなく、ただの痴話喧嘩の末に屋敷を叩き出された、粗末な身なりの女。何しに来たんだって話だし、さぞ憐れで惨めな者に見えていることだろう。ああ、一刻も早く、ここから立ち去りたい……。


 泣きたいのをぐっと堪えて黙っていると、突然ふわりと優しく髪を撫でられ、驚いて顔を上げる。

 すぐそばに、王太子殿下の憂いを帯びた美しいお顔があって、息が止まった。


「……辛い目に遭ったんだね。……大丈夫。君がアリューシャの恩人であることには変わらない。手当てを受け、耳が回復し体調が万全になるまで、どうかここに留まってもらいたい。……王太子宮に部屋を用意させよう」

「……。……えっ」


 王太子殿下から髪を撫でられたことに驚き言葉を失っていた私が我に返ると、アリューシャ王女殿下がキャッキャとはしゃぎ出した。


「いいわね!!絶対にそうするべきだわ!!いい考えよお兄様!うふふっ。嬉しいわ!毎日お茶をしましょうねミラベルさんっ」

「あ……、あ……、い、いえ、そ、そんな……」

「荷物は?泊まっている宿に置いているのかい?」

「あ……、えっと、は、はい……」

「ジーン」

「承知いたしました。取りに行きお持ちいたします」

「それと侍女たちに言って、来賓用のフロアに部屋の準備を」


 狼狽えまくる私。最高に楽しそうな様子で私の手を握り飛び跳ねるアリューシャ王女殿下。話を決めテキパキと指示を出す王太子殿下。部屋を出ていくジーンさん。


 王都に出てきて、たった二日目。

 こうして私の宿泊場所は、安宿から突如王太子宮へと移ったのだった。








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