6.転校初日の放課後
下校時刻になり、僕と、美少女転校生三人、ヒロと、茂木さん、晶子さんは一緒に教室を出た。
そして。
「お~い。岩島!!」
僕は元気よく岩島を呼ぶ。
「お~っ、吉岡って、ええっ!!!?」
岩島は一気に目を見開き、驚いた表情になる。
それもそのはず、昨日知り合ったばかりの、しかも、彼が一目惚れした美少女がそこに居たのだから。
さらには、他にも昨日知り合ったばかりの茂木さんも居たし、彼は、面識はないが、ヒロの姿もある。
当然だが、ヒロはバレエをやっているので、スラッとしてて、スタイルもいい。
この時期の男子だ。ドキドキしない方がおかしい。
「えっと、えっと、い、岩島です。」
岩島は、美少女転校生たちに向かって、頭を下げる。
「こんにちは、岩島さん。昨日は妹を助けていただき、ありがとうございました。」
晶子さんは丁寧に頭を下げる。
その礼儀正しさ、所作の細やかさに、さらに顔を赤くする岩島。
「い、いえいえ、お礼なら、吉岡に。」
岩島は緊張している。
「またお会い出来て嬉しいです。岩島君。」
茂木さんは岩島に頭を下げる。
「は、はい。僕もうれしいですし、よ、吉岡も茂木さんと出会えたこと、本当に喜んでますよ。」
岩島はサラッと、話題を僕の方にそらす。
「あら、そうなのですね。吉岡君とは同じクラスで、かなりおしゃべりしました。」
僕は茂木さんの言葉に、うんうん、と頷いている。
「えっと、そっちは。」
岩島はヒロの方を向いて、僕に尋ねる。
「ああっ、岩島は初めてだよね。原田さん。昨日、僕はバレエ教室で、会ったのだけど。彼女も、前住んでたところで、バレエやっててさ、僕のバレエ教室に、新しく入ってきて。ああ、言い忘れてたけれど、三人とも僕と同じクラスになった。」
僕は岩島に説明する。
「初めまして、原田裕子です。ヒロって呼んでください。」
「吉岡の友達の岩島です。」
二人は挨拶をかわして、頭を下げる。
そして。
「うぉ~。いいなぁ、うらやましいぜ、お前のクラスがよぅ。」
頭を上げた岩島は、素直な気持ちを僕に伝える。
「でも、最悪でした。」
ヒロが言う。
「最悪と言いますと。」
「はい。ずっと吉岡君がいじめにあってたみたいで。」
茂木さんが岩島の質問に答える。
ヒロと、晶子さんはうんうんと頷く。
「良かったじゃねえか、吉岡。」
岩島はものすごく喜んでいた。
「あの、岩島君は虐められている、吉岡君の味方なのですね。」
茂木さんがニコニコ笑う。
「当たり前ですよ、コイツは良い奴ですから。」
岩島が自慢している。
そして、美少女転校生たちは安堵の表情を浮かべた。
そうして、岩島を誘い、一緒に帰ることになった、美少女転校生たちの転校初日の帰り道。
僕と岩島が簡単に話す。
僕が虐められている理由、そして、教師も加担している理由について。
鍵山の父が県議会議員で、賄賂とかで、色々根回しされていること、この地域は保守王国だということ。
だから、誰も鍵山に逆らえないということ。
そんな中でも、岩島とは古くからの知り合いで、バレエ教室の発表会の写真撮影など、定期的に依頼していること。
岩島も写真が趣味なことを話した。
「うわぁ。ますます、最低。権力者って本当に大っ嫌い。」
ヒロは大きく頷く。
「はい。私も、この地域の事情は知ってましたが、こういう権力者は私も嫌いです。」
晶子さんもうんうんと頷く。
そして。
「権力者云々はともかく、吉岡君、辛かったね。私たちが今日来てから、少し元気になってくれればいいのですが・・・・。」
茂木さんはニコニコ笑いながら、僕の目を覗き込むように言う。
ドキッとなるが、何だろう。癒しの力も感じられる。
今までの苦しい何かから、解放されるように。
「あのっ、その、ありがとうございます。僕は、すごく元気になりました。けれど。」
「けれど・・・・?」
茂木さんが僕の目をさらに覗き込む。
「あのっ、皆さんもクラスで、虐めとか、孤立しないか、すごく心配で。僕と一緒に居るのなら、尚更・・・。」
僕は少し緊張しながらも話す。
「何言ってるの?あたしたちはヨッシーと一緒に居る方がいい。」
ヒロはニコニコ笑う。
「はい。それに、バレエをやっているなら、私たちと同じ、音楽が趣味ですよね。」
晶子さんがニコニコ笑う。
「はい。私も、音楽が好きで、踊ることも好きな、吉岡君と出会えて、本当にうれしいです。私も、歌うことが好きですから。」
茂木さんもニコニコ笑う。天使の微笑に思える。
その微笑、そして、皆の勇気あふれる言葉に、目頭が熱くなる僕。
「み、皆さん。」
僕は深呼吸する。
「本当にありがとうございます!!」
僕は精一杯大きな声で、頭を下げた。
「おおっ、良いっすね。素晴らしいっすね!!」
一緒に居た岩島はニコニコ笑う。
「そう言うことなら、皆さん。音楽とバレエが好きなので、どうでしょう?皆の演奏をお互いに見せ合うのは。私も、写真部で、本気になっている皆さんの写真を撮りたいと思っているのですが。どうでしょうか?本気で取り組んでいる皆さんの写真、撮らせていただけますか?」
岩島の思わぬ提案に、驚きを隠せない僕。
「おおっ、いいね。ヨッシーも昨日、かなりいい内容で踊れてたし。他の皆の発表も聞きた~い。」
ヒロがニコニコ笑う。
「えっと、写真は恥ずかしいですが、岩島さんからの頼みですので、お礼もしたいですし。」
と、晶子さんが少しためらったが、昨日のお礼も兼ねてなのだろう。少し考えて頷く。
確かに、写真も撮られるということもあって、緊張してしまったのだろう。その緊張する表情にさらにときめく岩島。
そして。
「あ、あの、拙い歌でよければ。よ、よろしくお願いします。」
茂木さんも緊張しているが、皆乗り気なので、頑張ってみようという気持ちが伝わってくる。
「それじゃあ、場所は。お前のバレエ教室だな。お前の母ちゃんに言えば、自主練用の部屋開けてくれるだろ?」
岩島が僕にニコニコ笑いながら言う。
「えっ、ま、まあな。」
僕は頷く。
そうして、岩島が集合場所を言ったが、その集合場所は、茂木さんと晶子さんのマンションの前になった。
今日までに新しくできて、入居が始まっているマンションは二つ、雲雀川の傍のものと、駅の傍のもの。どちらも十階建て以上の高層マンションだ。
茂木さんと、晶子さんのマンションは前者、雲雀川の傍の茶色いマンション。
ヒロのマンションは、後者、駅の傍の白いマンションだ。
僕のバレエ教室の場所がわかっているのが、ヒロと岩島。
そうなると、場所をわかっていない、晶子さんと、茂木さんのマンションに行って、迎えに行く方が筋が通っている。
当然だが、この時は、スマホの地図アプリというものは存在しない。
ましてや、母親のバレエ教室は、立派な看板がそのビルにあっても、パソコンのホームページには載っていない、そんな時代。
いつも、ポスターやチラシを配って生徒募集を行っている。当然、新しくできたマンションにもポスティングするために今、必死で、チラシを準備しているのだった。
だから、イキナリ場所を言われても、アクセスがわからないのだ。
ということなので、ヒロには現地で落ち合うことにし、僕と岩島は、家に荷物を置いて、茂木さんと晶子さんを迎えに行く。
川の傍の茶色いマンションは、本当に大きく、立派な佇まいだ。
高級感あふれる、レンガのような造り。
そして、ここら辺の地域はやはり車が必須ということで、駐車場が広く完備されている。
「いつ来てもすげーよな。」
「ああ。」
僕と岩島が、大きなマンションの下で、そのマンションの迫力に圧倒されながら会話をしていると、マンションの一階部分のメイン玄関が開いて、茂木さんの姿が現れた。
「ごめんなさい。待ちましたか?」
丁寧に僕たちの表情をうかがう茂木さん。
「いえいえ。大丈夫ですよ。」
「はいっ。」
僕と岩島は大きく頷く。
そうして、数分後にメイン玄関から出てきたのは、晶子さんと、妹の美里ちゃんだ。
美里ちゃんは僕たちの姿を見るなり。駆け寄ってくる。
「うわぁ~。お兄ちゃん達と、ハル姉ちゃんだぁ~。」
「コラ、美里。まず言うことがあるでしょ。」
晶子さんが美里ちゃんに言う。
「あ、あの、昨日はありがとうございました。おかげで、靴も、元通りです。」
美里ちゃんは頭を下げ、元通りに乾いた綺麗な靴を見せる。
「おおっ、良かったよかった。美里ちゃんが元気になって。」
「うん。美里ちゃん元気になると可愛いんだね。昨日より生き生きしている。」
「うゎ~い。ありがとう!!」
僕と岩島がニコニコ笑いながら美里ちゃんに言うと、美里ちゃんは元気いっぱいな声でこちらに応える。
「すみません。美里が聞かなくて。皆さん、昨日お会いしたので、大丈夫かなぁと。」
晶子さんがすまなそうに、頭を下げる。
「いえいえ、気にしないでください。美里ちゃんも知ってる顔がいて、安心しているようですし。」
僕はにこにこと笑う。
勿論、岩島も、そんなの大歓迎ですっ。と言わんばかりの表情で美里ちゃんを歓迎したのだった。
そうして、無事に合流できた僕たちは、母親のバレエ教室、つまり、僕のバレエ教室へ向かったのだった。
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