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贖罪  作者: 北村 達也
45/320

贖罪45

「理由はたくさんある。私が別の家で働くことになっても、お嬢様はいつまでもお嬢様で変わりがなく、

お守りしなくてはならないこと。お嬢さんは旦那様とケンカ別れなさっていて二年間会われていない。

私もケンカ別れした父がいて結局最後まで会えずじまいだった。だからお嬢様にはそんな思いをさせたくない。

昔の旦那様はお金を稼ぐ機械のようで我々への扱いは冷たかったが、

お嬢様が出て行かれた後は随分と丸くなられて、我々に優しくしてくださるようになった。

破産されて使用人や召使たちが散り散りになっていくとき、みんなの働き口を面倒見てくださった。

旦那様はお金さえあれば幸せになれると思ってそれを積み重ねてきたが、

お嬢様がいなくなられてからトラブルの元はお金だったのかと考えるようになり、表面上は事業の失敗だが、

実際はお金を無くしたくて仕方ないように見えた。

お金がなくなればお嬢様が戻ってきてくれるのではないか、会って和解したい、

そんな思いが旦那様にはあったのかもしれない。そしてこのタイミングでお嬢様が偶然戻ってこられた。

私にはこれが偶然には思えない。今日、ここで、二人は会わなくてはならない、そんな気が私にはするんです。

だから、お嬢様のため、旦那様のために、私は絶対に引きません!」


 ラルフの過去、父に何があったか、父の思いを知ったフォスは両手で顔を覆い涙した。


 父に会わなければと思う胸騒ぎは偶然ではなかった。彼女を思う父の気持ちが遠く離れた地にいる娘に届いたのだった。


 彼女はもう囲まれている男たちに怯むことは無かった。もっとも、彼らからは敵意はもう薄れていたが。


 彼女はどうしても父に会う必要があった。


 ラルフの後ろに隠れて彼に任せておくわけにはいかず、自分も一歩前に出てピーターの目をしっかりと見て言った。


「お願いです。父に会わせてください。」


 ピーターも彼女の目を見た。その目には断固たる決意が感じられた。


 彼は首を横に振って、大きくため息をついた。


「わかったよ。帰れって言ったって、あんたは梃子でも動きそうもないしな。行ってやれよ。

あいつの命があとどれくらいあるのか知らないが、好きなだけここにいればいい。

ここの奴らにもあんた達には手を出させないよ。いいな、みんな?」


 ピーターが周りを見回して言うと、彼らは頷いた。


「ようし、ここにいない奴らにも伝えておけ。さて俺はピーターだ。あんたはラルフだったな?お嬢さんは?


「フォスです。」


「よし、フォスお嬢さん、親父さんのところへ案内しよう。ついてきな。」


フォスたちの行く手を阻む男たちは道をあけてくれた。

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