ネトゲのボクっ娘嫁が毎回抱きつきを要求してくる。キャラは俺好みの可愛いキャラなんだが、もちろん中身のプレイヤーも……
「仲良くしてたあの子、中身男だったわ……」
ダルさと気だるさと眠気さから何事にもやる気がでない月曜日の昼休み。
俺、都筑高耶は学食でカツカレーセットを食べていると、目の前で茶色と黒髪が混じった髪の男
鶴見貴紘が一緒に頼んだ大盛りキムチ丼を食べながら、話しかけてきた。
「わかったから、食べてる時に話すな」
俺は貴紘を睨みつける。
「はぁ……話し方といい会話の内容といいどうみても中身女の子だと思ったのにな」
箸がとまった貴紘はため息をつきながらガックリと肩を落としていた。
この男が口にしている相手はプレイしているネットゲームのプレイヤーのことである。
前月ぐらいから貴紘のキャラとその相手が一緒に行動しているのを見かけてはいた。
俺もゲーム上で何度か話したことはあり、コイツの言う通り話し口調や会話の内容などは
女性かもしれないと思えるものだった。
けど俺はネットゲームの特徴上、それを理由に鵜呑みにすることはできなかった。
「何で男が女キャラつかってんだよぉぉぉぉぉ」
「……ってかお前だって女キャラ使ってるだろ」
そう、中身が男でも女キャラを使うことができるからだ。
もちろん裏技でも禁止事項でもないので、別に悪いことではない。
「だってさあ、女キャラだとチヤホヤされたり安心して女の子も寄ってくるって話だしさ」
「おまえがそう思うってことはみんなも同じことを考えているんだよ」
「なん……だと……」
貴紘はショックという表現を顔全体で表現するかのごとく
目を見開きつつ、大きく口を開けていた。
「畜生! 俺以外の男が女キャラ使うんじゃねーよ!」
目の前でわがままを言いながらキムチ丼にがっつく貴紘。
「なんかさ、他人事のように聞いてるけどさ、高耶にも」
お米も山盛りのキムチが跡形もなく消えた丼をテーブルの上に置いた貴紘は
右人差し指を俺の方に突きつけていた。
「人を指差すなって親に言われなかったか?」
「俺、親には万年反抗期だから」
単なるひねくれ者だろ……
いい加減ツッコむことに疲れてきたので言葉には出さず、
セットでついてきたデザートのバニラアイスを食べ終えて両手を合わせながら
内心でツッコみを入れる。
「レイシアちゃんだっけ? おまえと一緒に行動しているプレイヤー」
「そうだけど……」
「あの子、ドレア勢なだけあって見た目も服装もいいんだけどさ——」
「安心しろ、俺はおまえと違ってゲームで遊ぶ相手にそんな感情もたないので」
そう言って俺はトレイを持って立ち上がると、返却口に持っていくと
その足で学食を出て自分の教室に向かっていった。
「ちょ、まてよー! 置いていかないでくれー!」
後ろから貴紘の声が聞こえた気がするが、気のせいだろう。
夕飯と風呂を済ませて自分の部屋に行き、すぐにゲーム機を起動させて
スタンドにかけてあるコントローラを手に取ると、1人掛けのソファに全体重をかけて座る。
プレイ中のネットゲーム『リセテーラ・アース・オンライン』を起動すると
俺のキャラがのどかな村の広場に降り立った。
「さてと、とりあえずデイリークエから消化するか」
管理しているNPCに話しかけてクエストを選んでいると……
≪やっとINしたのかい? まったく待ちくたびれたぞ≫
とログにピンクの文字色のテキストが表示される。
この色のテキストはダイレクトチャットを意味している。
送ってきた相手の名前を見ると『レイシア』と表示されている。
≪相変わらず早いな≫
≪ボクはこのゲームをやることを生き甲斐にしているからね!≫
レイシアはログインも早ければチャットの返答も早い。
≪それよりもだ、さっき可愛らしいドレアができたから
オトギくんに見てもらいたいんだ!≫
デイリークエストを選んでいることなど知る由もないレイシアは
間髪入れずにチャットを送っていた。
ちなみに『オトギ』というのは俺のキャラの名前だ。
≪わかったよ、デイリー済ませたら家に行くから待っててくれ≫
慌てながらも返信する。
≪おっけー! 待ってるよー≫
ひとまずはこれ以上チャットが来ることはなさそうだ。
「さっさとデイリー終わらせて行きますか……」
クエストの一覧から一番報酬がいい、『グレートキメラ討伐』を選び
討伐対象のいる場所へキャラを移動させる。
「よし、終わった」
10分ほどでクエストを終えて報酬を受け取ると、移動アイテムを使い
レイシアの家に向かう。
≪おーい、きたぞー≫
家の中に入り、チャットを送ると家の奥からこちらに向かってくるキャラが見えた。
≪いらっしゃい、待ちくたびれたじゃないか≫
俺のキャラの前にはキラキラと輝きそうな銀色の髪の露出度の高いキャラ
レイシアを万歳のポーズで俺のキャラを出迎えていた。
いつもなら、レイシアの動きを見て癒されるんだが
今日に限っては貴紘のせいか、癒し効果が薄れていた。
≪あれ、どうしたんだい? いつもならすぐに抱きついてくれるのに≫
キャラクターの上にはてなマークを乗せながらレイシアがチャットを送っていた。
≪やったことないだろ、捏造するなよ≫
≪遠回しにやってくれって言っているんだよ。 まったく女の子にここまで言わせるなんて
君はニブチンだねぇ≫
チャットと同時に、地団駄を踏む仕草をするレイシア。
≪わかったよ……やればいいんだろ、やれば≫
チャットを送った後にレイシアのキャラを抱きしめる仕草をする。
≪うへへ、たまらんのう≫
チャットと同時にエモーショナルアイコンと呼ばれる吹き出しを表示させていた。
……起用すぎだろ。
抱きしめる仕草が終わると、レイシアはモデルのようなポーズの仕草を行うと
≪どうだいこの服装? めちゃくちゃ可愛くないかい?≫
いつもは聖女をイメージした白のローブに身を包んだ服装をしていたが
今日に限っては紺色のオフショルダーニットに白のミニスカート姿だった。
じっくりみるためにカメラモードにして服をじっくりと見ていく。
≪ちなみにだ、ブラとパンツは君の大好きな黒一色だぞ≫
突然ダイレクトチャットでこんな内容が送られ、驚きのあまり
カメラの視点がずれて画面には大理石をイメージさせた床が映し出されてる。
≪誰も聞いてないし、好きなんて言った覚えはないだろ!≫
画面の視点をレイシアに戻して、すぐにチャットを送り返す。
≪返答がないからてっきりスカートの中身を見ているのかと思ったよ≫
レイシアの返信に俺はため息をつきながら頭を抱えていた。
貴紘の言葉を肯定したくもないが、もしかしたらレイシアの中身も男じゃないかと
思ってしまう自分がいた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
≪俺がいつ! どこで! おまえのパンツをみたんだ!≫
自分のキャラの目の前にいるツノが生えた黒髪に刀が目印のキャラ『オトギ』が
地団駄を踏みながらチャットを送っていた。
「別にゲームなんだから見たって怒りはしないのになあ」
肩まで伸びた髪を人差し指でクルクルと巻きながら画面に映る光景を眺めていた。
「オトギくんの中身はどんな人なんだろう……」
オトギくんとの付き合いはかれこれ2年になろうとしている。
最初は只のゲームでのフレンドだと思っていた。
けど、毎日遊んでいるうちにこのキャラの中の人が気になるようになっていた。
「……あはは、ボクみたいな変なのに気にされても迷惑だよね」
無理矢理、納得させるために声にだしてみるが、簡単に考えがわかるわけもなく
このキャラに対する思いは強くなっていく。
≪明日も学校だからそろそろおちるぞ≫
≪楽しい時間はあっという間だね≫
≪おまえも夜更かししないでちゃんと寝ろよ≫
≪まったく君は母親みたいなことを言うんだね≫
最後に2人で同時に≪おやすみ≫と言って
ほぼ同時にゲームをログアウトしていった。
「……そういえば、学校に提出する書類があるんだっけ」
パソコンで学校専用のメールブラウザを開き、該当のメールをクリックすると
ソフトが起動して長い文章が表示された後、最後に承諾のボタンが設置されていた。
文章をざっと読んでから承諾ボタンをクリックすると
承諾済みボタンに切り替わり、その下に私の名前である『青葉玲奈』が表示されていた。
お読みいただきありがとうございました!
なろう初投稿になります!
ランキングに載ってみたいですので応援宜しくお願いします!
その際にこのページの下(広告の下)にある、
「☆☆☆☆☆」を押して評価をしてくださると泣いて喜びますので
ぜひページを閉じる前に評価いただけたら嬉しいです!
感想もぜひよろしくお願いします!