表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第二章
96/263

96

水樹は興奮したままだった。そして明人まで巻き込んでしまい、差し出がましい行動だったと反動で落ち込んだ。


「聖也君、俺も直で家帰るね。お疲れ様。」


「私も帰ります。部長さん、正木さんお疲れ様でした。」


「水樹一人でいける?」


「はい。自転車なので平気です。」


「お疲れーい。」


水樹と勇利は一緒に歩いた。


「びっくりしたよ。水樹ちゃんて、俺らが思うより気が強いんだね。」


「なんか妙に気持ちが入ってしまって・・・恥ずかしいです。まあ、でも、スポーツマンは負けん気が強くて根性が座っていないと、試合では勝てませんからねっ。」


「ごめん。それちょっと意味わかんない。あはは。」


勇利が笑ったので水樹の元気が増えた。そして勇利は門の方には行かずに水樹の為に駐輪場まで来てくれたのだった。


「ここまで送ってくれたんですよね。ありがとうございます。」


「うん。でも紙コップとは言え、また頭に直撃しなくて良かったね。明人には俺からお礼を言っておくよ。」


「はい。ありがとうございます。ほんとに宇野さんは良いお友達が沢山で凄いです。」


「明人は不思議な奴だけどね。」


「そうなんですね。」


自転車の横に立ち、水樹は最後に出来得る限りの最高の笑顔で別れの挨拶をした。


「送ってくれてありがとうございました。宇野さん、元気出して下さいね。ボールもそうだけど、宇野さんがこれ以上傷付かなくて私は良かったです。」


「えっ・・・。はあ。後輩にまで心配されて気を使われて、情けないよ俺・・・。ほんとはね、まだ心も体もズタズタなんだ。彼女の事、大好きだったからさ・・・。」


勇利は目を赤くさせて斜め下に視線を落とした。水樹は励まさなければとたまらない気持ちになった。


「そんなに好きなのに、許してもう一度やり直すって出来ないものなんですか?」


勇利は少し考えた後、一度水樹の方を見てまた下を向いて首を横に振った。


「俺がもう無理だから。」


「まだ好きなら仲直りして、また幸せそうな宇野さんを見せて欲しいですっ。」


「あのね・・・、俺的にそれはもうないんだ。」


そういうと勇利は堪えきれずに下を向いたまま鼻水をすするように声を殺して泣いてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ