89
勇利は青ざめた。水樹が自分をかばったせいで倒れているのだ。そして水樹ちゃんっ。と直ぐさま声を掛け助けようとした時、聖也が先に水樹に駆け寄った。
「水樹っ、水樹っ、おい、大丈夫かっ!?」
聖也も真っ青だ。勇利もなんとか起き上がり水樹のそばに行った。
「ごめん、俺のせいでごめんねっ。」
「だい・・・じょうぶ、です・・・。」
体育館内が緊張している。
「痛い・・・。」
水樹は自分で起き上がり頭を抑えながら言った。
「脳みそ・・・2つに割れてませんか・・・。」
全員がキョトンとした後は大爆笑になった。
「さすが最強マネージャー!超やばいって!」
「ごめん、俺が打った最強シュート、ゴールのバーに当たってそっちに飛んでったんだ。」
「水樹、ほんとにいける?」
「正木さん。大丈夫です。皆さんも練習に戻って下さいね。」
「勇利お前さ、見学してんなら水樹ちゃん連れてちょっとそこの部室で休ませて様子見といて。」
部長が指示を出すと聖也達はまたコートに戻った。聖也はちらっと勇利を見て、頷いて合図した。
‘水樹の事頼む。’そうとでも伝えているに違いない。
わかってるよ過保護なんだから。ごめんね水樹ちゃん。皆も巻き込んじゃって。と勇利は心の中で聖也に返事をした。
そして勇利は言われた通り水樹とバレー部の部室に移動して二人で休む事にした。部室に着くと、勇利は長椅子に横になり仰向けで片手を額の辺りにおいた。
「ごめん、水樹ちゃんじゃなくて俺の方がダウン中。」
皆に心配を掛けないように振る舞ったが、実は水樹もまだ頭が重く、だから勇利の頭上付近のパイプ椅子に腰掛けた。今日の練習中の勇利の元気のなさは相当なもので水樹は心から心配だった。
「あのっ、別れたって聞いて・・・。」
「うん・・・。」
「間宮さんともう一度やり直す事って、駄目なんですか・・・。」
そんなによろける程に辛いなら、また元の羨ましいくらいのお似合いカップルに戻って欲しかった。
「うん・・・。彼女ね、もう新しい相手がいるんだよ・・・。」
水樹に衝撃が走る。
「そんなっ・・・。」
そして勇利の悲しみが一気に押し寄せ胸に刺さった。




