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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第二章
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学校の体育館は一つしかなく、そしてハンドボールは体育館を全面使用するので、バレー部とバスケ部とそれからハンド部とで午前午後の交代制で体育館を使用している。


午前中のバレー部の練習を終え、堀田と明人は昼食を済ませてから自転車で堀田の家に移動して時間を潰していた。


「勇利もういけるのか?」


「昨日やっと連絡あったんだぜ。」


「まだそっとしておけば?」


「飯食うくらいいけるだろ。それにこういう時は誰かと馬鹿でくだらない話をしておいた方がいいんだ。」


堀田は勇利に馬鹿でくだらない話をするつもりらしい。


「間宮と別れたってほんとなの?」


「ああ。間宮、浮気して勇利と別れて井川と付き合ってるんだぜ。」


「なんでもよく知ってるね。」


「俺達の住む世界って、狭いからな。すぐだよ。」


来週から新学期が始まる。専門性の強いこの学校はクラス替えがなく、だから勇利達のようにトラブルが起きても、卒業するまで蓋をしてうまくやり過ごしていかなければならない。


「同じクラスで付き合うときついだろうね。俺にはそんな情熱ない。」


「まあさ、ひと悶着あったら気まずくなるなんて誰だって頭ではわかってる。でもただの仲間の一人だった相手が自分にとって一番大事なやつに変わっちまうとさ、その他大勢でいる事がその時の一番の苦しみになるんだよ。俺はちゃんと行動できる勇利みたいなやつを男らしく思うぜ。」


「話長っ。全然頭に入ってこなかったんだけど。」


「なんだお前女に興味あんのかよ。まさか中学の時女いた?」


明人は答えなかった。


「この人否定しないんですけどー。」


「うるさいって。」


「若きアキテルの悩みだな。」


「俺は悩んでないし死なないから。そこはユウテルでしょ。」


自分ならば絶対に勇利から話してこない限りは詮索しないし自分だってされたくない。自分の心は自分だけのもので、でもそこを遠慮せずぶち破るのが堀田であり、こういう人間がいるから世の中は繋がれて循環出来ているんだと明人は思う。


「堀田は彼女作らないのか?」


「プライベートは事務所に任せてるんだよ。俺面食いだし。」


「意味わかんない。でもお前ならなんでも出来そうな気がする。」


「馬鹿な事言ってないでそろそろ行こうぜ。」


馬鹿を言ってるのはどっちだよ、と明人は呆れた。


明人ですら仁美が勇利にした事は許せない。勇利と仁美はお似合いで周りの皆が納得していたから、だから尚の事仁美を何一つ理解したくなかった。


新学期だというのに明人の気持ちが重い。


「勇利を傷付けてまで手に入れたいものってなんなのかな。」


家を出て、再び勇利との待ち合わせ場所の学校の食堂に二人は戻った。

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