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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第二章
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「すいません、今日は間宮仁美さんは休みですか?俺達間宮さんのクラスメイトなんです。」


入店してからほぼ無口だった明人が突然通りがかりの従業員に尋ねた。


「そうでしたかー!えーと、今日は仁美ちゃんね、お休みですよ。」


え!?と3人は理解できずに同時に顔を見合わせた。


「病気か何かですか!?」


「いえ、元々シフトに組まれていませんでしたよ?」


「えっ・・・。」


二人は勇利が心配になった。唇を噛み締め眉間にシワを寄せ、何かを堪えているように見える。明人は声を掛けようか迷ったが出来ない。一体何が起きているのか誰にもわからない。


「おい勇利、どういう事だよ?」


容赦ない堀田の問いに勇利はやっと動きが戻る。


「ごめん、電話してくる。」


そして勇利は席を外し店の外へ出て行った。残された二人は料理を口に運びながらそれぞれの思いの中勇利が戻るのを待った。


戻った勇利に堀田が聞く。


「間宮なんて?」


「仁美、電話に出なかった・・・。」


「着信見たらまた掛かってくんじゃね?」


「皆心配かけてごめんね!なんか俺の勘違いとかあんのかも。さ、早く食べてカラオケ行こうぜ。」


堀田と明人に気を使い、勇利はパッと明るい表情に戻すとその後本当に3人でカラオケを楽しんだ。


「街にうーもーれ・・・。」


良い歌だ。堀田の歌が明人と勇利の心を大きく揺さぶる。


「大丈夫か勇利。」


「とりあえず信じてるから。サンキュ明人。」


カラオケが終わっても、とうとう仁美からの電話はなかった。そして3人は帰宅途中に仁美の話をしなかった。明人も気にはなったけれど、他人の出る膜ではないし、その後も特に勇利に連絡をするような性格ではない為に、この話の結末に関してはもう少し後に堀田に聞かされただけだった。


それから勇利が二人と別れた直後、勇利の携帯電話に仁美から着信があった。


「あ、あたしだけど・・・今日、来たの・・・?」


「何か用?」


勇利は驚いた。怒りというよりも自分でも聞いた事のないくらいに冷たい声が出た。


「今誰かといるの?俺も今からそこ行くわ。」


「えっ・・・。」


勇利の心臓は凍結してしまったようで、左胸が固く冷たくなっていた。もしかしたら脈も止まっているのかもしれない。仁美は拒否したが、勇利は強引に会う約束を取り付け、凍った感情のまま待ち合わせ場所のカラオケ店に向かった。誰の目も気にせずに話がしたくて、勇利が指定した場所だ。


そこまでの道のりはあれこれ考える事は敢えてしなかった。自分の目で見た形あるものしか信じない。それでも恐怖心も大きく勇利の脈は止まったままで、そしてカラオケ店に着いた。

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