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次の日、水樹は人生で初めてのクリスマスデートに挑む中、指定された場所で聖也を待った。待ち合わせは未だに苦手でとても恥ずかしい。最初の挨拶が本当に照れるのだ。
「みーずき。また上の空になってるよ。」
「あ、正木さんっ。こんにちは。お久しぶりです。今日はお忙しい中誘っていただいてありがとうございます。」
「こーら。緊張しすぎ。俺たち付き合ってんのに礼なんておかしいだろ?俺としてはそろそろ慣れてもらいたいな。」
「すみません・・・。」
聖也に釣り合うような服装かどうかも心配であったし、彼女らしく出来ていないのかとしゅんとなった。
「ところでさー、今日の服装まじ特別かわいい。まじ今日の水樹最高っ。」
水樹はどう返せばいいのかわからずにリアクションに困ってしまった。これはいつもそうだ。聖也は過去に彼女もいてもてるのに、なんで自分が選ばれたのかが少しもわからない。
「じゃ行こっか。」
水樹は常に緊張していた。いくら恋愛をした事が無くても、恋人同士が何をするのかくらいは知っている。だから一緒に歩く時は、恥ずかしさもあり鞄を両手で持つという弱気な事をしてしまうのだった。
それに対して聖也は何も言わずにいて、二人は今日も手を繋がずに歩く。
そして、春のクラブの歓迎会に参加できなかったからと聖也が提案したボーリングを3ゲームし終え、再び夕食をとる場所へと移動した。
「凄くかわいいお店ですね。」
そこは絵本の世界をモチーフにしたとてもお洒落なレストランだった。さすが聖也だ。
水樹はお小遣いを多めに持ってきておいて良かったな、と思った。
「そんな高級じゃないけどさ、雰囲気よくて超気持ち上がるよね。」
「ほんとですね。」
「じゃ乾杯しよっか。メリークリスマス。」
「メリークリスマス。あは、こういうの照れてしまいますね。」
「そう?それから16歳おめでとう水樹。それ、付けてきてくれたんだ、ネックレス。」
「急にこんな大人っぽいものを身に着けておかしくないか心配です。」
「今日の白のニットのワンピースによく似合ってるよ。」
「はい・・・。」
普段から聖也はためらう事なく水樹が赤面する台詞ばかりをストレートにプレゼントする。水樹は素直に嬉しかったし頑張ってその気持ちに応えたかった。




