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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第二章
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その場で聖也はせんべいを売っていそうな問屋なんかを調べた。


「行くか、水樹。」


「はい。」


「安全運転でね。」


聖也と水樹は勇利達に見送られながら久々に並んで歩いた。歩きながら、背の高い水樹はそういえば自分と並ぶと結構バランスが良いんだったよなと思い出す。


「学校のすぐそばに停めてあるから、ここで待ってて。」


水樹を門の前に残して一人で取りに行き、そしてすぐに戻ると徐々に水樹が聖也の視界を占領していった。


鞄を両手で持ち、スッと立ちながら自分を待つ水樹。まるでデートの待ち合わせをしている彼女のように思えたが、思えた所でなんだというのだ。


それから聖也は水樹の横で停まって一旦降りた。水樹は相当驚いた顔をし、聖也は自分の部屋から持ってきておいた一つを手渡して聞いた。


「乗り方わかる?」


「乗った事ないです・・・。」


そして簡単に説明をするとマフラーを一度ふかしてから聖也は走り出した。バイクの後ろに水樹を乗せて・・・。


でも少し進んだだけでも早くも聖也の心臓が破裂した。


やばい、なんで俺のバイクに水樹が乗ってんだ・・・?


自分で乗せておいて聖也はパニックで、そして水樹は片手で聖也の腰の辺りを遠慮がちに掴み、もう片方の手でバイクを掴み座っている。


ぎゅっと両手で運転手をホールドしなくても乗車は出来るのだが、聖也にしてみれば危ないからしっかりと両腕で自分に掴まっていて欲しくもあった。


それから赤信号になったので振り返り水樹に話し掛ける。


「もうすぐ着くよ。寒くない?」


「少し寒いです。あっ。」


水樹が聖也に近付き大声で答えると、カチッカチッと、ヘルメット同士がぶつかる音がし、どうも水樹はそれが恥ずかしかったようで、少し体を後ろに位置させ直した。


その行動がかわいくて聖也は動揺した。でもその後も赤信号の度に水樹に話し掛け、その度にヘルメットがカチカチぶつかる事に困惑気味の水樹がやっぱりかわいくて、もうこの段階で既に聖也の理性はぶっとんでいたのかもしれない。


ただ肝心のせんべいについては、残念ながら一番近くの店は時間が間に合わずに閉店していたのだった。


「次の店は電話してから行ってみるか。」


聖也は手際良く電話を掛け、3軒目でやっと繋がり在庫を確認し、電話をしながら水樹に指でOKの合図を出した。


その時水樹は今日一番の穏やかな顔をして、笑って何度も頷いた。その姿がまたしてもかわいくて、つい癖で目を逸した。

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