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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第二章
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「メッセージでも送ってみれば?」


「そこまでは・・・。」


「喜ぶんじゃない?」


そんなわけはないのに勇利は何を言っているんだろうと水樹は思う。


「いいですいいです連絡先聞いた事ないんです。また復帰されるのを待っていますね。教えてくれてありがとうございます。」


「そ?うんわかった。あーいっぱい喋ったから喉乾いた。それにもう着替えるな。ん?何?俺の裸興味あんの?」


「も、もうっ。またからかって酷いです。」


勇利がいつもこんな感じで接してくるから、水樹はたまには何か仕返ししてやろうと企んだ。


「先輩、練習前にあま~いおしるこどうですか?」


もちろん断られるのが大前提でおしるこを差出した。ただこれであの無表情の明人も笑ってくれたから、次は勇利も笑わせたかっただけだった。


「練習前の今!?そんで何故今ここにおしるこが!?」


「あは。冗談ですよ先輩っ。普段の仕返しです。」


水樹はいたずらが成功してもう十分に満足だった。でも、この勇利様は更に一枚上手(うわて)なのである。


「んーん、貸してみ?」


勇利は水樹から缶を受け取るとプルタブを引き開け口をつけ、おしるこを流し込むように飲んだ。


「あまっ!そしてぬるっ!まあまずくはないけどね。ほらお前も飲んでみなよ。」


え、え、え!?と水樹はここまで予想出来ておらず、パニックになってしまった。


いいのかな・・・?でも・・・。


ドキドキした。そして渡された缶にほんの少しだけ唇を重ね、ためらいながらそっと飲んでみると、脳まで溶けるような甘さだった。


甘い・・・甘いです・・・ほんとに甘いよ・・・勇利さん・・・。 


おしるこがこんなにも甘い飲み物だったとは、15年間の人生では誰も教えてくれなかった。


そして自分もクラブに行かなければならないので、おしるこを飲み干してから心ここにあらずな状態で勇利に挨拶をしてグランドに行った。


行ったけれどもせっかく沢山購入した渡し忘れのドリンクをどれか一つでも受け取って貰おうと思い出し、Uターンをしてまた勇利の教室に戻った。


再び覗くと勇利はちゃんと着替えを済ませていて、友達とお喋りをしながらドアの付近に立っていた。


水樹は聞くつもりはなかった。いや、そうではなかったかもしれない。


勇利に悪いとはわかっていたけれど、気になってしまってその会話を聞いてしまった。

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