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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第二章
58/263

58

勇利と同じクラスの二人組、長谷川明人と堀田(ほった)誠はまだ揃ってバレーボール部を続けていた。


特に明人にとって、青春の全てをバレーボールに費やしているという程ではないけれど、授業に来たくない日でもバレーだけをしに学校に来る事があるくらいにはバレーボールは性に合っていた。


そしてクラブが始まる前に食堂に行く為、黒板側のドアから廊下に出ると、廊下で眉をハの字にして立っている水樹を偶然見付けたのだった。


「このこ、俺知ってるぜ。」


堀田が水樹には聞こえないように耳打ちをしてきた。そして明人が返事をするより先に水樹に近付きなんのためらいもなく話し掛けた。


「やっとクッキー持ってきたのかよ。」


「え!?クッキーですか・・・?」


「はっ!?」


堀田の突拍子もない発言に明人は(あき)れ、水樹は当然物凄く困った顔になった。そして明人は堀田のクッキー物語で思い出す。春頃に自分とぶつかってひっくり返っていた女の子だ。


慣れてはいるが堀田にはいつも振り回される。明人が仕方なくフォローに回った。


「ごめん、こいつなんか勘違いしてんのかな。言った事は君には関係の無い事だから気にしないで。」


「あのー・・・、おしるこならありますけど、飲みますか?」


「え?」


そして明人は迂闊(うかつ)にも吹き出して一瞬だけ笑ってしまった。


おしるこならあるのかよ。いや、普通ないでしょ。まあ良かったな堀田貰っとけよ。


ちらと堀田に向けて頷いた。


「いらねー。」


はっ?そこは貰うとこだろっ、と明人はもう段々面倒臭くてどうでもよくなった。


明人は水樹が誰でなんの用でここにいるのかわからない。ほんの少しだけだが心配していると堀田が勇利に向かって大声で叫んだ。


「勇利ー!勇利ん所の1年のマネージャー来てるぜー。」


その声に勇利が気付き廊下に来てくれ、もう俺達には関係ないから、と明人は食堂に行こうとした。でも去り際に堀田は勇利をからかう。


「勇利よりでかいんじゃねーの?」


「はいー!?全然俺の勝ちだわ。俺四捨五入したら170あるからっ。」


身長が170㎝ない者あるあるを聞き流し、二人は、勇利、大きくなったんだな・・・と笑うでもなくしみじみした様子でここから離れていく。


「水樹ちゃんどうしたの?急ぎの用事?」


水樹ちゃん・・・勇利の後輩・・・。


明人は初めて水樹の名に触れたのだけれど、しばらくするとまた当たり前に水樹の名を忘れるのだった。

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