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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第二章
57/263

57

季節はまた少し進み、夏の大会から3ヶ月が経とうとしていた。学生達は文化祭シーズン真っ只中で、特に1年生はクラスとクラブの両方の準備に大忙しだ。


そして5年生は夏の大会で引退し、4年生が次の部長に就任したが、水樹はてっきり聖也が部長になるものだとばかり思っていたので、そうではなくてとても驚いた。


それどころか、あの日以来聖也はクラブに顔を出していない。


だから、どうしていますか?とメッセージを送ってみようかと思ってみたりする。でも直接連絡先を交換してもいないただの後輩では、なかなかそこまで手を出せないのが一般的だろう。


そこで水樹は放課後クラブが始まる前に勇利の教室に出向いて聖也の様子を尋ねてみるのはどうだろうかと思い付いた。


もいろん勇利の教室に行ってみたいだけではないし、本当にいつも優しくしてくれた聖也が心配で様子を聞きたいだけで、絶対にやましい気持ちは一つもない。


とはいえ、まだ見ぬ勇利の別の世界に足を踏み入れようとしている事に、正直な所テンションが上がってしまうのは隠せない事実でもある。結局水樹は楽しみにしながら放課後になるのを待って、自分の教室を出発した。


そして口実というか、急にドリンクを差し入れしたくなり、遠回りにはなるのだけれど自販機まで寄り道をする事にした。


何もないのに渡したら変なのかな?友達に沢山貰ったっていったら自然かな?急に教室に行っても嫌な顔しないかな?


このように勇利の事をあれこれ思うだけで幸せな気持ちになれる。そんな時間が水樹は好きだ。


自販機に着くとお札を入れスポーツドリンク、それから続けてホットコーヒーのボタンを押した。


ガチャン。ガチャン。落ちてきた物を拾い上げしばらく考え込む。


‘あま~いおしるこ’


何度確認しても、缶にはコーヒーではなく‘おしるこ’と表記されている。水樹はこれを飲んだ事がなく、更にはこれが飲み物なのか食べ物なのかもわからない始末だ。


そして管理会社にクレームの電話は掛けずにコーヒーと紅茶を買い足し、急ぎ足で勇利の教室に今度こそ向かい、教室のドアからそっと中を覗いてみた。


勇利は廊下から近い席に着席して漫画を読み、そして同時に音楽も聴いている様子だった。すぐに見つけてしまった勇利に水樹はひるんで一度顔を引っ込めまた悩んだ。


イヤフォンをしているし、きっと大きな声を出さなければ気付いてもらえない。


先輩の教室で大声を出すわけにもいかないので、どうも出来ずに廊下でぐずぐずためらっていると、どこかで見た二人組に運良く話し掛けてもらえた。


あ、この無表情の人・・・。


水樹は誰だっけと考えた。

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