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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第二章
53/263

53

試合終了後整列し、聖也は先輩に両脇を抱えられベンチに戻り更には扉の外に出ていった。


先輩達は泣いていた。後輩達も泣いていた。先生の目も真っ赤だった。


それからすぐに儀式的な閉会式が始まったけれど、そこに聖也の姿はなく、選手達もただぬぼっとデクノボウのように立ち尽くすのみで見ていられない。


泣いてもわめいてももちろん3位だという事実が(くつがえ)る事はなく、虚しい閉会式は余分な悲しみだけを追加して終了した。


その後、先生と1、2、3年生は先に帰る事になり、荷物をまとめて解散する為に1階の空きスペースに移動した。


閉会式を終えた先輩達は着替えもせずにあちこちで座り込んでまだ泣いていて、それを見て後輩達もまた貰い泣きをした。だからまだ少し誰も動けなかった。


夏子も5年生の近くで泣いている。水樹もずっとタオルを顔に当てて泣いている。そんな水樹を慰めるようにそばには勇利がついていた。


「ヒック、ヒック・・・。」


「また来年な・・・。」


勇利が水樹の頭を撫でると、水樹はもっと泣き出した。


「くっ・・・。」


それに影響されて勇利も目を(つむ)り、いよいよもうどうすればこの場が収まるのかわからない位にこの空間は悲しみが充満していた。


くそっ、悔しいよ、悲しいよ、俺が5年生になったら絶対に・・・。


来年こそは、俺達の時こそは、とここにいる後輩全員がそう覚悟したに違いない。


ただその願いが叶い雪辱をはらす時が来るのは近い未来なのか遠い未来なのか、誰にもわからないからこそ、今日はこの悲しみを堂々と抱えて家路につけば良いのであった。

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