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学校には自転車通学の学生と電車通学の学生が混在していて、結果勇利達Aクラスの新入生は最寄り駅にあるカラオケ店に15名程集まり、そこでは各々紹介し合って話したり、順番に歌ったりとでがやがやとそれなりに盛り上がっていた。そんな中でも、一同は堀田の歌に首っ丈だ。
「ぬーすんだっばっいっくっで・・・。」
「ねえねえ長谷川君、堀田君て最高だよね。いつの何の歌かなあ?超うける。」
「さあ・・・。」
「あたし喉渇いちゃった。あ、ドリンクなくなっちゃったからそれ貰ってい?」
そう言い放つと仁美は偶然隣に座っている長谷川明人のコーラをゴクッと飲んだ。
「あーうまっ!あ、次私なんだ。ありがとね明人君!」
明人は無表情のまま、新しいドリンクを取りに部屋を出た。
「あ、次私かも。」
それから仁美がAメロからも少しアップテンポな歌を歌い始めた。高音が透き通るように伸びる仁美の歌声は圧巻で、その場にいる全員が少しの間話すのをやめて聞き入ってしまいたくなった。
うまい・・・。かわいい・・・。なんだよ、歌も上手いのかよ・・・。すごいよこいつ・・・。
歌うのが好きなのか、本当に眩しい笑顔の彼女に勇利のドキドキは止まらなかった。
「じゃあおつかれー。」
「またなー。」
「間宮さんの歌やばかったよ!聞き入っちゃたもん。電車だよね?こっち方面?」
「残念だけど、反対行きなの。カラオケ、かっこよかったよ!また明日ね勇利君!バイバイ。」
ゆゆゆ、ゆうり君!?ななな、なんだよ!?ままま、まさかもう俺に!?えーお互いまだよく知らないじゃん!
突然の勇利呼びに、勇利は完全に高揚した。
はあ、明日から、勉強にクラブ、だけじゃなくなりそうだよ。
帰り道、勇利の頭の中はあっという間に仁美で埋め尽くされていた。