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後半も後り5分。聖也の息は荒く肩で息をしなければならない。
「いけ、いけ、いけ、頑張れ、頑張れ、頑張れ!」
そしてそんな先輩達の姿は応援席を白熱させる。
絶対負けたくねー・・・。
1点、2点、とまた点が入り得点は27ー28、けれど後1点、後1点が届かない。
くそっ。このままじゃなんも始まらない、もっと仕掛けていかねーと。
ボールは聖也達の陣内で回されていて、次はどこから来るのか集中して予想する。そして相手のセンターが動いた。
ここだ!
聖也はパスカットした。そしてすぐさまトップスピードでドリブルするとシュートを打ちにゴールまで走り出した。もちろん相手も無我夢中で凄い速さで聖也を止めに戻ってくる。
後何分だ?間に合うのか?間に合うのか?選手は誰も時計を見る余裕なんてない。1秒だってロス出来ない。聖也は走った。聖也はドリブルした。そして最後はラインよりもかなり手前で跳んだ。
ダンッ・・・。と体育館中に足音が響き渡るとその瞬間、聖也の頭は空っぽになり、歓声も雑音も全て吹き飛んだ。
でもそこにただ一つ届いたのは、聖也だけに聴こえる勝利の女神の声だった。
「3分前ですっ。」
水樹っ・・・。
聖也の全身が突然バネになる。聖也は弓のようにしなやかに体を反らせてジャンプした。聖也は今日、やっと一番高く跳べたのだ。
ピーッ。
直後、耳が破裂しそうなほど、大きなホイッスルの音が会場中を震わせた。
「痛っ・・・。」
けれど聖也の声は小さすぎて、この喧騒の中では誰にも聞こえなかった。
どわあ!
それとは対象的に特大のどよめきが響いた。一体何が起こったのか。実は相手の必死のディフェンスが、シュート体勢に入っている聖也の腕をあからさまに弾き飛ばしたのだった。
「よし!ファウルだ!チャンスだいけー!」
後輩達のテンションは限界なく上がり続け、そして聖也は相手のファウルによって7メートルスロー、つまりペナルティスローを獲得した。残り時間もわずか、聖也はすぐに準備に入り軽々とシュートを決める。
どわあー!
聖也は天井に向かってこぶしを突き上げ、それからベンチに向かって最高の笑顔を見せた。そうしてもう一度歓声が起これば、それはこの試合の一番の大きな歓声だった。




