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「ねえねえ、水樹ちゃんでしょ?」
「はいっ。そうですけど、あの・・・。」
「突然ごめんね。ハンドのマネージャーの鈴宮だよ。あのね、新しいマネージャーちゃんを帰る前にどうしても見たくて来ちゃったの。だってさ、超かわいいって、ちょっとした噂なんだもん。」
「いえ、そんなことは・・・。涼宮さんの事宇野さんに少し聞いていたんですよ。私、立花水樹と言います。よろしくお願いしますっ。」
「そんな緊張しなくていいって。ふふ、1年生って感じが超かわいいんだけど。」
「私なんて鈴宮さんが大人すぎてドキドキしてしまいます。」
「当たり前じゃん大人だもん。あは、水樹ちゃんって面白いね。」
すぐに打ち解け合った二人はその場所にとどまり、女の子らしく立ち話に花を咲かせ始めた。
そうなってくると、水樹の戻りが遅い事に気が付いてしまう男が出てくる。
遅い・・・。水樹が戻って来なくて、気が散る。
「なあ勇利ー、水樹遅くない?」
「そう?うーん。威勢よく立ち去ったけど、迷子になってるのかな?俺、探してくるよ聖也君。」
「あ、いや、あ、ちょうど今からお前ボール回しじゃん?俺トイレも行きてーし、仕方ないからついでに探してくるわあ。」
「そう?んじゃあ頼むね。」
勇利が行ってもよかったのかもしれないけれど、それが聖也的に許せない気がした。そして聖也は一番に部室を確認し、でも水樹の姿はなく、しかもそこには重い物や荷物を運ぶ為の台車が置かれたままで、勇利がこれを使うと教えてないんだな、と理解した。
水樹大丈夫か?まさか自力で運んでるんじゃ・・・。
あの子ならきっとそうするんじゃないかと容易に想像でき、聖也はもっと急いでお茶を作る為の順路を逆から潰して水樹を探し回った。
どこいんだよ。
そして少いらつき始めた聖也は、夏子とお喋りしている水樹をとうとう発見した。
「ね、ハンドにかっこいい人いた?」
「えっ、えっ?あ、いえ、皆さん上手でかっこよくて、凄いですよね。」
「面白いねー顔に出てるよ。嘘下手すぎ!誰誰誰?ふふふ!」
たじろぐ水樹はなんとか質問で切り返す。
「鈴宮さんは、どうなんですか?」
「私ー?前の部長が彼氏なんだよ。今は附属大学にいるけどね。あー、私のだけ聞いてずるいよ水樹ちゃん!ね、誰誰誰?」
確かに言わなければこの尋問は収まらないみたいで、水樹は簡単に覚悟を決めた。




