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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第四章
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去っていく明人の後ろ姿に、早く何かしないとと水樹は追い詰められ、それどころか何年も夢の続きを待っていたはずなのに金縛りのように体のどの部分も動かない。そして、もう悪夢は見たくない、なんとか動いてっ、とまた叫んでなんとか立ちあがり、でもその後は良くない方の記憶が邪魔をして結局また動けなくなった。


ほんとにごめんね。ちゃんと就職も決まっていたのに、私のせいで心を壊してしまってごめんね。ちゃんと声に出して謝りたいから、だからお願い明人君待って行かないでっ・・・。


呼び止めたくても水樹は声が出ない。そして明人もまた、水樹のそのひたむきな強い思いが直接届いてはいなくても心で訴えていた。


自分は医者になって一体誰を何から救いたいのか。周りの友人達も皆順番に同じように悩んで苦しんでいた時期に、自分と一番大切なものから逃げた奴の言葉に魂がこもるのか。そんな上辺だけの処方薬に誰も耳を傾けるわけがない。そしてもし勇利の言った事が事実ならば、二人は今日開放されなければならないのだ。


だから明人は振り返り、覚悟を決めて水樹と話をする。よし、いけるよ。と立ち止まり涙を止めて振り向くと、座っていた水樹は立ち上がっていて、少しだけ明人に近い場所で立ち尽くしていた。ドクドクドクドクと凄い速さで明人の鼓動が高まっていく。加えて手も少し震えているが勇気を出して進もうと思う。そして明人がゆっくりと近寄っても水樹は逃げなかった。


「久しぶり・・・。」


やっぱり第一声はよくある台詞になった。それでもかつて愛した人の愛した声を聞くと水樹は想像した事がない程に苦しかった。

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