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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第四章
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その日水樹は夢を見た。いつまで経っても定期的に見る同じ内容の夢だった。


‘明人君、行こうっ。’


‘うん。’


毎回場面は違っても、浅い夢の中では今日こそやり直そうと言うんだと執念にも近い強い思いが共通してあり、夢の中の明人は優しく笑っていて水樹も笑い、まるでお互いにまだ想い合っているような雰囲気だった。


そして夢の最後も毎回同じで、やり直そうと言おうとした途端に声が出なくなり必ず目が覚めてしまうのだった。自分の世界の夢だというのに目覚めた後は毎回布団に顔をうずめて、いい加減にしてよとやりきれなかった。


明人の事をまだ好きと言うよりは、ふられた瞬間の被弾したかの様なショックが身体から抜けきらない事が原因だった。それでも7年の成長の証として、どうせ夢を見るならせめて夢の中だけでもやり直したらいいのにと地味ながらにも開き直れるようになっていた。


ところで水樹は来月の4月で勤務して8年目になる。今では展示やイベントの企画にも参加したり簡単に論文を書いたりとそれらしく働いていた。その日の午後も壁に掲示しているスタッフの紹介コーナーのカードを春に向けて新しく描き直す作業に携わった。


白川さんに湯川さんに山中館長。と水樹は学歴や専攻は記せても毎回書く内容が変わらないし、それから後何人いるんだっけと頭をひねる。そして似顔絵は得意ではないのでいつも仲間のJ.J.に頼んでいた。


J.J.は水樹が働き始めた当初は大学生で、水樹は彼を年上だと思っていたので年齢が1歳下だと知った時は驚いた。そしてそんなJ.J.もまもなくここを辞めてアメリカに帰ってしまう。


「J.J.また似顔絵お願いしてもいいかな。」


「シュア。ミズキの絵だけは成長しなかったからね。でもそんな所も愛しいよマイハニー。」


はは。と毎度おなじみの苦笑いをする。J.J.はリップサービスが旺盛でストレートで情熱的で、水樹も挨拶代わりに何千回とJ.J.に口説かれた。

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