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水樹は明人との交際を通じ、ふと思う事がある。別れた人に貰ったモノ達を、皆どうしているんだろうか。水樹は聖也に貰ったアクセサリーは意味は無く宝物箱に片付けていて、特別な感情の無い物体と化している。
ならば明人から貰った物はどうなるというのだ。モノに罪はない。まだ新しい彼氏もいないのだから使い続けてくたびれれば棄てれば良いのだろう。でも手紙は?と自問する。続いて今は棄てられないというのが正直な気持ちだと自答した。それもこれも全て、明日は明日で必ず違う自分になっているから、明日の自分に聞いてみればいいのだし、そしてそんな事より水樹は明人と一緒に卒業したいと願っている。
それから卒業式を明後日に控えた日の午後、水樹が帰る為に支度をしていると明人の後輩の和木が話し掛けてきた。
「あのさ、知ってるかもしれないけど・・・。長谷川さん卒業出来ないかもって・・・。バレー部の顧問に聞いたんだ。」
水樹はそのままの状態で走って教室を出て、4階にある担任の先生の部屋に行こうとした。
「立花さんっ。」
呼び止められてビクッとした。
「話があって待ってた。ちょっといい?」
4年生の時に水樹に好きだと告げた違うクラスの学生だ。水樹と彼は少し離れて歩いて、非常階段のドアから出て少し階段を上った。
非常階段では明人の面影と思い出が蘇り、この思い出の場所は大切な場所であると同時に悲しい場所にも変化している。
「誰もいないね。あのさ、俺の事覚えてる?」
「うん。」
「なんか、このままだとお互い気まずいじゃん?」
「えっ?そ、そうかな?そうだよね・・・。」
「あのさ、これ、俺のバイト先のイタリア料理屋で売ってるチョコなんだ。立花さんみたいにかわいいイメージだから。」
「うわっ。チョコは確かにかわいいね。ありがとう。」
瓶の中にはキャンディの様に包装された何種類かのチョコレートが詰め込まれていた。




