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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第四章
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期末テストの最初の教科の途中、ガラガラっと不機嫌そうにドアを開ける音がして皆が一斉に振り向いた後、また直ぐにカリカリとシャープペンシルの音が走リ出した。


水樹はドアを開ける音だけで明人だとわかり、入室締め切り時間ギリギリにやってきた明人は、一度自分の席を探す為に立ち止まってから席に着き、テストに取り掛かった。


卒業する気はあるんだと水樹はほっとし、それからつい気になってしまい試験中も時々明人を確認した。忘れようとは心掛けていると言いながら、こうしてあれこれ気にしてしまう。


水樹が初めて明人を知ったのは1年生の時で、廊下で明人とぶつかり水樹が転倒したというのに明人があまりにも無表情で驚き、更には手を差し出したのはぶつかっていない友達の堀田誠だったのだからおかしくてたまらない。


そしてその時は既に勇利に侵食され始めていたから、まさか明人と付き合う事になるとは青天の霹靂だった。明人は無表情で怖くて冷たい雰囲気で優しくて面白くて、水樹はただ、明人を愛してしまったのだ。


テスト期間の5日間、明人は遅刻はしても休む事はなく、時折バレー部の後輩の和木透と雑談する姿も見せた。そんな所を見ると嬉しくて寂しかったけれど、これくらい突き放されないと忘れる事ができないからと水樹は別に構わない。


そして全てのテストが終われば後は卒論の提出で、まもなく長い学生生活にピリオドを打つのだ。入学した時は15歳で、20歳の先輩達がとてつもなく大人に見えたのに、いざ自分が20歳になってみると少しも大人ではないんだという事がやっとわかる。


きっと皆同じだ。


そして水樹はテストが終わってからは友達と過ごす時間を大切にした。お酒を覚えたばかりの仲間は 結局飲んでばかりで、飲んでは騒いで時には羽目を外して時間よ止まれと叫び、その姿を見ると、そこにはいない明人の姿が想像され、彼の沢山の気持ちの中の一部分を理解出来たような気がした。

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