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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第四章
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今は近過ぎてわからないかもしれないけれど、今日という日を、わざわざ自分から傷付きに行って馬鹿で若かったな、と思う日がきっと来ると信じたい。


「あのね。実は去年プレゼントしてくれた指輪・・・学校のトイレで置き忘れて失くしてしまったの。せっかく心を込めて贈ってくれたのに、何も大事にできない口先だけの私で本当にごめんなさい。失くしたって、もしかして気付いてた?」


「あー・・・。プレゼントするのに必死すぎて、俺の手から離れた瞬間に安心してあげた事忘れちゃってた。」


「そっか。」


「うん・・・。」


「あは。こんな事すら気にして言えないなんて、駄目だったね私達。まあ、今更どうでもいいか。それに私は別れた彼女だから、明人君にとって圏外に・・・もうなってるんだよね・・・?」


明人の目を見て言えた。それに終始今日の明人を怖いとは思わなかった。


「えっ・・・。」


明人は片手を水樹の頭に添えると、おでこにギュッと口づけをした。


さようなら?


好きだよ?


水樹にはわからないけれど、明人はその後は目を合わせなくなり、水樹は車から降りた。そしてゆっくりと歩き出し耳を澄ませて、発進音とエンジン音が小さくなってからやっと振り向いた。


明人君・・・。


自分の気持ちを先にぶつけて満足して、好きだと沢山伝えるのは相手にも良い事の様に錯覚していた。まだしばらくは好きでい続けてしまうかもしれないけれど、もう連絡するつもりはない。


はっ、うっ、うっ・・・。


溢れる涙を右手で拭い、それから明人の前で泣かなかった自分に偉かったよっと声を掛けた。


そしてそれ以来明人はほとんど学校に来なくなり、内心は心配でたまらなかった。12月は活動するにはまだ十分温かいけれど、通り抜ける風は冷たくもあり、手袋をしながら繋いだ手の幸せが余計に恋しい。


そうして学校も冬休みになり、年を越し、あっという間に新学期になったが、数日経過しても明人は学校に来なかった。


明人君・・・。


担任の先生の部屋に行き、もう自分は関係がないのに明人の様子を尋ねた。

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