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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第四章
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明人とゆっくり会えない日が続く中、水樹のハンドボール部は悲願の全国大会に出場した。今年の開催地は中部地方で、大会2日目は土曜日という事も重なり聖也も女の子を2人連れて応援にきていた。


聖也の彼女かな?と水樹は思い、別で彼女と一緒に応援に来ていた勇利に挨拶がてら確認してみると、聖也の連れた女の子の一人は京都に住む、瞬介から話には聞いていた瞬介の彼女だと教えてもらい驚いた。


遠距離恋愛なんて凄いなあと感心する。なんといっても瞬介は水樹の知り合いの中で一番優しい人で、遠距離でも続きそうだと納得して自分の事のように誇らしかった。そしてあらゆる場所で咲いている恋の花と目の前の試合とどちらも大事だと一度試合に集中した。


結果は決勝トーナメント8チーム中3位で、この栄光に辿り着く為に皆で1年生の頃から長い時間掛け練習に励み負けた悔しさで全員で泣いた。それから閉会式後に冷めるわけのない興奮と共に自分達の街まで新幹線で帰った。水樹達5年生はこれで引退するけれど、長く共にしたクラブの思い出は一生忘れない。良い人に沢山出会え、入部して本当に良かったしありがとうと思う。


打ち上げは別の日に設けられ、水樹は駅でご飯に行く皆と別れ疲労でフラフラになりながら自宅に戻った。時刻は8時で、今日は明人の誕生日だ。水樹の家から明人の家まで自転車で40分かかる。


行こう。明人の誕生日は1年で今日しかない。明人にメッセージを送り、ろくに返事も確認せずに就職祝いと誕生日を兼ねて用意してあったプレゼントの腕時計を抱えて自転車にまたがり、疲れた重い足で一生懸命水樹は漕いだ。


明人君。明人君。会いたいよ。会うだけじゃ嫌だ。今日は大好きって言って欲しいよ。と、もし今日会えたらもし今日渡せたら、また楽しい夏が始まるからと未来を信じようとした。


そしてマンションに着き、肩で息をして、明人からの返事はないままオートロックのチャイムを鳴らした。

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