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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第四章
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施設へ見学へ行った夜、水樹は明人に電話を掛けた。


「はい。」


「あ、私です。こんばんは。急にごめんね。今大丈夫?」


「うん。電話あると思ってたよ。今日どうだった?」


「うん。楽しかったよ。」


「はは。楽しいとかあるの?良かったね。どんなとこだったの?」


「J.J.さんていう外国の人と一緒に川に行ってきたの。」


「JJ?川?」


また水樹の新しい知り合いを覚えなければならないな、と明人は思う。


「うん。川の水温を測って、魚を網ですくったよ。」


「ほんとに?」


「オイカワ、アブラハヤ、カワムツ、後は忘れたけど、J.J.さんが教えてくれた。私には全部同じに見えたけどね。」


「それ仕事なの?楽しそうだね。」


「そうだね。」


「でもJJさんって何者なの?」


「本名は知らないけどアメリカ人の男の人だよ。目が薄茶色で綺麗なの。」


「へえー。よし、俺もそろそろコンタクトに変えようかな。どう思う?」


「えっ。急にどうしたの?それにそんなの駄目だよ。それは駄目なの。まだ駄目。これから働いたら同期の女の子とも仲良くなるし、これ以上カッコよくなって女の子が沢山寄って来たら今以上に心配になる。」


「何言ってんの。」


「明人君の眼鏡が好き。似合ってるよ。だからもう少し待って。」


「そんな必死になる事?笑っちゃうよ。」


自分はカッコよくなんてないのにそう思っているのは水樹だけだと明人は笑う。


「良い方に流れるといいね。」


「うん。またおいでって言われたよ。かいもんこうもくかぞくしゅ、覚えなきゃ。」


「花鳥風月土っ天海冥水平リーベ僕の船?」


「あはは何それ。明人君もそんなくだらない事言うんだね。ほんとに色んな一面があって面白いな。」


「失礼すぎっ・・・。でも会いたいね。」


「うん・・・。今週の土曜日は時間約束して早くからお出かけしようよ。」


「わかった。」


お互いの事がスムーズに運ぶのを感じていて明人も水樹も機嫌が良かった。そして明人は久しぶりに感じた水樹のかわいさに異様にふわふわした。


けれども週末の土曜日になる直前に明人は面接へ行った企業から不採用の通知を受けた。でも落ち込んでいる暇はない。普通に良くある事だ。それでも明人は留年、成績の面で不利だから、早く内定を貰いたいと焦る。


だから水樹には悪くても気分が乗らずに土曜日の約束もまた寝坊した。水樹は怒らなかった。もちろん明人だってこんな状況なのだから約束をキャンセルしたって良かったのだ。


明人は、水樹が明人との約束を今でもどれ程大事に思っているのかなんて、親密になって1年が経ったせいもあり案外軽く考えていた。

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