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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第四章
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その時ふいに目に飛び込んできた。でも0の数が4つで50000円だった。その指輪は水樹に似合いそうで買えない事もないけれど、そんなにお金を出すものなのかがわからない。


「お決まりですか?そちら、シンプルですけどダイヤが一つ付いていてかわいいですね。」


またあの店員だ。


「あ、でも止めときます。高いし。」


「ご予算を伺ってもよろしいですか?」


「1万円です。」


「かしこまりました。こちらの商品はプラチナでございまして、やはりお石も付きますと少々お値段が上がってしまいます。お客様はまだお若くていらっしゃいますから恐らくお相手様もお若いということで、例えば同じお色味、デザイン、宝石・・・うんたらかんたらで・・・。」


話が長くて首を掻いた。


「じゃあそれで。」


「ありがとうございます。裏側に文字の刻印がサービスとなっておりますけれどもいかがなさいますか?女性はお喜びになられると思いますよ。」


「何彫るんですか?」


「はい。例えばお二人のイニシャルでしたり、記念の日でしたり、ラブ、なんていうのもよくお見かけします。うふ。」


うふ・・・?気持ち悪い。そしてまたぐるぐる思案した。


A&M?


いや・・・。


LOVE?


いや・・・。


FOREVR。


ないな・・・。


「0803。でお願いします。」


それは明人の誕生日で、だからこそ一生忘れない明人と水樹が付き合い始めた日だった。


「他はよろしゅうございますか?」


「はい。」


「かしこまりました。それでは指輪のサイズでございますがおわかりでしょうか?」


あ、サイズ・・・。はっとして明人は鞄の中から眼鏡ケースを取り出し、更には中から夏祭りの時に買った水樹の薬指に型どられたままのおもちゃの指輪を取り出した。


サプライズは出来ないと言いつつも、明人はあの時、いつか社会人になれば水樹にサプライズでプロポーズするつもりでいたのだろうか。それは明人にもわからない。


そして店員さんに任せて女の子が喜びそうなラッピングを選んでもらい、喜んでくれるといいなと一息ついた。予定よりも高くなってしまったけれど気にしない。またバイト頑張ろうと明人は満足した。


指輪は後日引き取りに来なければならなく水樹の誕生日は8日後の土曜日だ。何も豪華な用意はないけれど、自分の部屋で過ごそうと思う。


大役を終えた明人は外に出ると12月の初旬のまだ凍てつかない空気を胸いっぱいに吸いこみ、神経だけが疲れた状態でのせられて鼻歌なんをか口ずさんで、早くもその土曜日を想像しては自転車を軽々と走らせた。

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