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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第四章
212/263

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顔の筋肉の動きも捉えられない薄暗闇の中で、水樹は両手をクロスさせるように胸を隠して顔を横に向けていた。


ところがその抵抗虚しく、明人は水樹の両手をそっとほどいて胸の前に垂れていた髪も背中に回した。そうして明人と水樹の間を遮るもの一つずつが取り除かれると、明人の想像する女神の彫刻よりも完璧に創造された裸が現れた。


まだ未開発がゆえ妙に未熟でアンバランスな色気があり、そして普段目に出来る皮膚の部分は夏の間の日焼けの跡が残っていてもその内側はもう少し白くて、リアルさに興奮して明人の目がくらんだ。


「全部見せて・・・。」


水樹は返事はしなかったが、そのまま抵抗せずに座り続けた。


「綺麗。」


その言葉だけで水樹の脳に電気が走る。そしてお互いの引力と水樹だけが持つ妖術の様な重力により、明人はごく自然に引っ張られ、思いつく限りの不器用な愛し方で水樹に触れた。


左と右の胸が違う感情を持つ。水樹は、こんなに大きく心臓が震える事は知らないと恥じらい、そして明人の血液はどんどん集まり熱を持ち、水樹の反応が知りたくてたまらなくなる。


声としては何も聞こえなくても、明人が刺激する度にしがみついてくる水樹の腕が、手が、小さな吐息が小刻みに揺れて固くなるだけで明人は十分幸せだった。


そして、明人は水樹を支えながら倒れるよう誘導し、眼鏡を外して枕のそばの台に起き、やっと水樹を見つめたのだった。その()はとても優しく、水樹はそれだけで明人の愛してるの5文字が十分に伝わってきて胸がいっぱいになり、涙が出そうで潤んだ。


「目、綺麗・・・。知らなかった・・・。」


決して明人の顔から好きになったわけではないのだけれど、初めて見る眼鏡を外した瞳はとても穏やかで綺麗で、水樹は今日、また新しく明人に恋に落ちた。


「どうして今まで何もしてこなかったの?」


明人は答えた。


「そういう対象にさせたくなかったんだ・・・。」


あ・・・。と水樹の胸は熱くなったがどんどんどんどん自分ばかりが好きになっていくようで怖くもある。でもそれは杞憂に過ぎないと証明するように、明人は丁寧に口づけをし、そして浴衣を脱いだ。

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