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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第四章
204/263

204

ひたすら不愉快だった。そして明人は回想させられた。


中学2年の冬の終わりに3年生の浅井佐和子先輩と交際したのは、佐和子の友達の沢渡由夏に押し切られたからだった。明人は大体の女子が嫌いだ。でも体育館でたまに顔を合わせる面倒見のいい佐和子の事は最初から嫌いではなかった。ただ多分彼女に恋をしていたのではなくて、あの頃は彼女がいるという自分に興味があっただけなのだと思う。


その時は最初から最後まで佐和子が自分のどこを好きになったのかはわからなかったが、時々見せる照れた笑い顔に落ちた、などと言っていたっけ、と記憶に残っていた。


そして交際中に佐和子が高校に合格して春休みになり、その後はこまめじゃない中学生の明人と、新生活が充実してしまった高校生の佐和子との間に生じたすれ違いで会う機会も減り、梅雨になる前によくある自然消滅をしたのだった。


そういえば佐和子は最後にこう言ったっけと明人は更に思い起こした。


‘私達にはもう答えは出てると思うけど・・・。でも私は明人君が好きだったんだよ。’


明人は何も答えをあげなかった。今でも別れた恋人にまた会いたい事もないしそれどころか記憶から消えてくれても良かった。だから今日の再会もどうでもよいし、水樹がいるのに昔の話なんかをする女の無神経さに腹が立っていた。


でも・・・。でも佐和子の事は嫌いではなかったのならば、あの頃もう少し歩み寄る努力をすれば良かったのかもしれないな、と思うのは、明人も二十歳を過ぎて大人になりかけているせいなのかもしれない。


どうでもいい。とこれ以上考えるのは止めて、車を運転しながら水樹を気にした。何も聞かない水樹は長い時間無言のままで、明人はふう。と息をした。


「気になるの?」


「えっ・・・。全然・・・。もっと長谷川さんの昔話聞きたかったくらいです。」


そういう割には顔が笑っていない。そしてまたお互いに話すタイミングを失い、濁った空気のまま目的地まで走った。それでも水樹の態度は変わらず、明人は水樹が何を望んでいて、自分にどう言って貰いたいのかを、つまりは得意ではない女心というものを読み取ろうとした。

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