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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第四章
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夏休みが終わり、いよいよ学校生活も勉強に実験に研究にと本格的に時間を取られるようになってきた。水樹と同じクラスの前田礼の夏休みはというと、今年はあまり学校の友達とは会わずに家族で別荘に行ったり、ガールフレンドと充実した時間を過ごしたりするものだった。そして今日は何人かで調べ物をする為に図書館を利用していた。


礼は、水樹がもう勇利に告白したのだろうかとちらりと水樹を観察した。それから本当は話し声を発してはいけないのだけれど、皆で夏休みの話をした。


「いつも礼の休みの時の話聞いてるとさ、俺と暮らしが違い過ぎてなんで同じ学校にいるのかまじわかんない。」


「何言ってるの。僕は人の上に人をつくらず。ただの前田だし。」


「それって勝ち組が言うと嫌味じゃね?まあさすがロン毛が似合うイケメンは言う事が違うね。」


「まあね。」


「否定しろよ。」


あはは。と笑い合う。それから各々作業をし、そして夏休みの間にまた色っぽくなった水樹に礼は付箋を渡された。


‘私、彼氏ができました。’


書かれていたメモを見るとドキンとわずかに緊張し、そしてその後胸がチクッとなった。でもそれはほんの一瞬の痛みですぐに消えてしまった。


そっか。ほんとに良かった。やっとだね。僕も嬉しいよ。宇野さんとうまくいったんだね。と、水樹の長い長い片思いが報われて礼は自分の事のように嬉しくて微笑ましかった。そこで礼は直ぐに返事を書いて水樹に渡した。


‘Uさん?との未来を祝福するよ。’


また返事が返ってきた。


‘違うの。Hさんだよ。’


えっ・・・?どういうこと?と礼は困惑しHを探す。


Hって、Hさんって、僕の知ってる?長谷川さん?


「はせっ・・・。」


「こらっ。しー。しー。」


礼が咄嗟に声を出したものだから水樹は慌てて礼を制止した。礼の胸は急にズキッとしたが、自分のその感覚が理解し難かった。


‘おめでとう。’


礼は返事をそう短く書くとそれからはとても課題をやる気分になれなくなり、図書館を出て考えを整理させながら家に帰った。


勇利でもなければ瞬介でもない。そして当然礼でもない。でも皆違う目線で水樹のそばにいた。なんで。どうして。考えろ。と礼の胸が少し苦しい理由を礼は考えた。

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