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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第四章
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ヒューバーン。とやがて一発目の花火が上がると、会場内からは大歓声と拍手が沸き起こった。


「うわあっ!」


明人と水樹は同じ声で叫ぶ。そして隣を見て目を合わせて微笑み合う。隣には大好きな人がいて、夜空には大輪の花火だ。恋の歌ばかりが頭の中で踊り出す。


‘好き?’


‘うん・・・。’


想いを通じ合わせ、そしてフィナーレ前の一発一発魅せる為に打ち上げられる派手な花火の合間に、二人は隠れてこっそり小さなキスをした。それから花火が終わると混雑した人の流れに埋もれつつ満たされた気持ちの中、明人は歩いた。そして彼女と見る花火は幸せのシンボルで、まさしく楽しい感情は数倍にも跳ね上がるというのがこの明人にも見事に当てはまった。


「あのね。」


「何?」


「あ、うん。勇利さんが北海道から戻ったみたいです。なんか、お土産をくれるみたいで、明日の夜にご飯に行ってきますね。」


自分の事は‘長谷川さん’ などは別に気にはならない。それに別にいいけれど、その言い方だとご飯に行く事は決まっていると言う事だ。


「へえ・・・。」


なんだかな、もう。と急に現実になる。そしてどことなく不快だ。行くな。も、楽しんでおいで。もどちらも違っている。急に冷静な明人に戻り、そこからは何かを話す気にもなれなくて口数少ないまま駅で解散した。


そうだ。明人には明人の、水樹には水樹の生きる場所があるのだ。付き合ったのが夏休みという異世界に近いタイミングで、二人だけの世界が出来上がるには最高で最適な環境だったのだから日常を忘れるのも当然だ。


そして考える。水樹は付き合うのは自分が初めてなのだろうか。だから色々鈍感なのか。と。でも、いや違う、なぜだか初めてじゃないような気がするのだった。


過去なんてどうでもいい。そうだよ。自分がやきもちをやくなんてない。と明人は切り替えた。


だからこの不快な気持ちを自分以外に知らせるつもりは毛頭無く、ただ勇利は明人から見ても何でも揃っている凄い奴で、どうして水樹が自分なんかを好きになったのか今更突然疑問に思い、明人は、不快というより不安になった。

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