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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第四章
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搾乳が終わると朝食、そして休憩時間になるけれど、疲れて眠る者が多くて勇利もそうしている。でも体力のある時は、各々昼も沢山ある作業を手伝っていた。


ここへ来て数日が過ぎ、勇利は仲間と生活リズムとに少しは慣れてきていて、そこでしばらく休んだ後、部屋を出て食堂のような所に顔を出した。食堂ではここのお母さんが食事の準備をしてくれていて、それからテーブルに、何人か宛の宅配便が届いている事に気が付いた。


「何か手伝いましょうか?」


そして勇利は皆に荷物を届けつつ呼びに行くと申し出た。


「セナちゃんは仔牛の所だ。」


「そうですか。だったらセナさんのはこのままにしておきますね。」


と何気なくセナの荷物の送り状を見て、勇利の体に電気が走った。


「嘘っ・・・。」


セナさん、セナちゃんと皆が呼ぶから、勇利は疑いなくそれが下の名前だと思っていたのだ。


瀬名瞳。実はセナは名字で、名前がひとみだったのだ。


こんな事って・・・。と驚がくする。


漢字は違えど思い出したくもないかつて愛したアイツの名前も ‘ひとみ’なのだ。そしてそれは決して珍しい名前ではないのだけれど、大学、年齢、そして名前とこんな風に偶然が3つ重なる時、恋に落ちてしまう簡単単純な男がこの地球上に存在していても不思議ではない。


皮肉にも、誰がどれくらい何年掛けて相手を思い続けたかなんてはっきり言って関係なく、ちゃんと用意された時間に運命はやって来る。


あれ?俺は誰の事を言ってるんだ?と回顧すると勇利は仲間への荷物の配達をやめ、その代わり仔牛のいる牛舎に向かった。そして仔牛に優しく笑い掛け世話をしている瞳を見付けドキッとし、それから自分には向けられた事のないその笑顔が羨ましくて、仔牛に妙なヤキモチをやいた。

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