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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第四章
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夏休みも後半になり、二十歳の明人は来年は公式戦には出場出来ない為に全国大会後に他の5年生と揃って引退した。その結果少し時間に余裕が出来た明人と水樹は、どれ程お互いの時間を消費させているか気付かないくらいに一緒にいた。


「バイバイ。」


「バイバイ・・・。」


毎日楽しくて幸せだった。水樹が何かおかしな事をしてしまった時に、優しく笑ってくれる明人の顔が好きだ。無表情な顔を知っているだけに笑ってくれた顔はやっぱり一番安心する。


ただ、まだ帰りたくない、とは水樹はいつだって言えなかった。もっと一緒にいたい。もっと触りたい。もっと明人を知りたい。自分ばかりが相手を好き過ぎているように思えて少し不安でもあった。


「昨日のバイトの休憩時間に良い物見つけたの。前にさ、良い物あげますって交換ノートに書いたの覚えてる?やっと約束守れたよ。あー良かった。だからはい。帰ったら見て。」


明人は配達のバイトをしている。そしてキョロキョロ周囲を警戒してから水樹の頬に軽くキスをして自転車を漕いで帰っていった。


水樹は突然こんなかわいい事をする明人が愛おしくてたまらない。嬉しくて、その場で余程開けようかと迷ったけれど指示通り帰宅してから部屋に飛び込み汗をかいたまま開封した。


わっ。四つ葉のクローバーだ・・・。かわいい・・・。


これを摘んでくれた姿を想像して思わずクスッと笑う。更には同封されていたとても丁寧な字で書かれた手紙が、最近の不安な水樹の心を優しく慰めてくれた。


‘ 水樹へ


突然で驚いた事でしょう?本当は手紙を書くつもりは全くと言っていい程なかったのですが、爽やか度(冗談)とラブラブ度(本気)が少しでも向上すればと思い決心しました。


今日は土曜日、今日も一緒に遊べて楽しかったです?


明日は日曜日。水樹に会えないのでとても寂しいです。だから明日、僕は水樹の事を考えながらバイトに励むので、水樹も僕の事を考えながらバイトに励んで下さい。絶対に。会えなくても、二人の心はいつも一緒です。本当かな?


時々ふと思うのですが、毎日水樹をポケットの中にしまい込んで、持ち歩きたいのですが、そうもいかないのでまたこれからも思う存分遊びましょう!まずは花火大会!来週ですね。早く行きたいな。


最後になりましたが、大好きです。’


長谷川さんっ・・・。読み終えると胸がキュッと締め付けられドキドキした。明人が好き、好き、大好きで、どうすればいいのかわからない。おかしくなる。止まらない。さっき別れたばかりなのに、今すぐに会いたい。


好きになってくれてありがとう。と水樹は嬉しくて、眠るまで繰り返し繰り返し何度も何度もその新しい宝物を読んで幸せに包まれた。

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