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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第四章
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昼食の後はお祭りの様なゲームコーナーに移動し、二人は銃に矢を詰めて的に命中させるコーナーで遊んだ。水樹はスッと集中して銃を構える。こういう勝負事の時は、普段のポワッとした水樹は封印されクールな表情を見せるので、明人は面白くて仕方がない。


ストッ。


「あっ。」


嘘でしょ。と明人は笑った。矢が的の中心に見事に貼り付き水樹は手足の長いカエルのぬいぐるみの景品を獲得したのだった。


「やりましたあ。」


と言いながら満面の笑みで水樹がカエルを背負うと、えっ!?それリュックなのっ?と明人は驚いた。


「それ何?」


「かえるのパスケースみたいです。」


「えっ!?」


確かに大きなカエルの割には、カードを入れる箇所が一つあるだけのシュールなグッズで、でも水樹はそれを嬉しそうに背負う。それにしても手足が長いカエルで、大人っぽい水樹とはアンバランスなそのカエルだったけれど、水樹の喜ぶ様子を見れば、結局は明人にとってはなんでも良かった。


それから午後からも遊園地で過ごした。


「日が落ちてきたね。もう帰らないと。最後何乗る?また絶叫する?」


「あは。もう叫ぶ体力が・・・。それに、あの、そろそろ、少しだけ・・・今日はあんまり、手とか、さわれてないから、長谷川さんの事・・・。」


明人は優しい眼差しを向け、想像の中で水樹を抱き締めた。そして手を繋いで定番の観覧車の列に並んでいると、水樹が時々後ろを気にしているのがわかった。しばらくすると突然水樹はカエルのリュックを背中から下ろし、後ろに並んでいた小学生か幼稚園くらいの小さな女の子にあげてしまったのだった。


え・・・?今度は何やらかした?と明人が仰天していると女の子のお母さんが、いいんですか?と困ったようにお礼を言った。どういう経緯でこうなったかは不明で、明人はそのカエルが自分のではないので別に良いのだけれど意味がわからなかった。


「あっ。長谷川さんとの今日の思い出の品、何も考えずにあげてしまいました・・・。ごめんなさい。」


別に良いのだけれども意味は不明だ。でも明人は追求せずにクスッと笑って水樹の手を引っ張り、体の距離を少し近付けて観覧車に乗る順番を待った。

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