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翌朝は不機嫌に起きた聖也との会話で始まった。
「何か食べます?」
「コーヒーだけでいい。」
「二日酔い大丈夫ですか?」
「んー。まあ。それよりお前昨日楽しかったか?あの子と超いい感じだったじゃん。」
「そうかな。でも良い社会勉強になりました。」
「かたっ。あのさ、学校で何があったか知らねーけど、今の鬱っとした雰囲気に飽きたらそのうち元気出せよな。てか明日どこに帰るの?実家?」
「えっ・・・。あ、うん、あ、いや、実はこの前同窓会があってもう帰省したんで、だから帰らないです。」
「へえ。けどもう帰りの切符買ってあんだろ?見せてみろよ。どこにあんの?」
「えっ、あ、リュックの前ポ、あ、いや、まだ・・・です。」
「なんか怪しいなお前。」
と言いながら聖也は勝手にリュックを捜索した。
「あれ。なんでお前こんな古い写真持ち歩いてんの。うわあ。これ俺が4年の時の地方大会の集合写真じゃん。懐かしいなあ。やべ、古傷が痛むわってか俺若ぇー超イケメン。」
「ほんとそうですよね・・・。」
「そこは否定しとけよお前ったく。んーよしっ。今日は俺がベタに京都観光してやる。」
そうして聖也の提案で急遽出掛けた京都初心者の瞬介は、清水寺や金閣寺、神社などを興味深く見て回り、風情溢れる街並みが情緒的で心を動かされた。それに、大人になっていく聖也は一緒にクラブをしていた頃よりも優しかった。そして日もまだ沈まない明るい時間帯ではあったが、温泉に寄ってその日大量にかいた汗を気持ち良く流した。
「あーきもちーわー。そんで今日は何が良かった?」
「そうですね。街全部を好きになりました。抹茶パフェも味が濃くて超美味しかったですしほんと満足です。あと哲学の道が心に染みましたね。なんか、そこで気が済むまで物思いにふけってみたい、というか・・・。」
「なんもないとこじゃん。」
「まあ。」
「ところで知ってるか?この温泉の効能。リウマチ腰痛関節痛、更には美肌効果にあとはそうだな、恋の傷を癒やします、とかじゃね?じゃ、そろそろ出ようぜ。」
瞬介は聖也に続いて脱衣所に向かい、そしてこの聖也でも失恋した事があるんだろうかとふと思ったが、まああるわけないかとあっさり結論づけた。それから最後は聖也おすすめのラーメンに感嘆して帰宅し、昨夜よりもいくらかリラックスした状態で布団に入った。
「今日はありがとうございます。明日は朝8時には新幹線に乗りたいんで。」
「早っ。なんか用事でもあんの?」
「別にないです・・・。」
確かに瞬介にはもう何も用はなかった。でも京都へ来て良かったと思った。会うのが聖也で良かったと思った。そして最後は心配してくれてありがとうおやすみ。と聖也に感謝してから瞼を閉じた。




