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「今日も一日おつかれー。かんぱーいっ。」
瞬介は簡単な自己紹介をさせられ、でも瞬介は、うわあ。やだな。ほんとにこんな事するんだ。と恥ずかしかった。
「なあなあ、瞬介君てお酒飲まれへんの?弱いん?」
「あー、こいつさあ、今日の飲み会の為にわざわざ向こうから来た俺の後輩。まだ未成年なの。」
「めっちゃ凄い気合やん!でも瞬介君てなんか、聖也君と違ってギラギラしたもんが全然無いっていうか、素朴な感じがめっちゃかわいいなあ。」
「まじ?俺そんなギラついてた?やば。そんな事言われたら今日皆の連絡先聞き辛いじゃん。」
「聞かれても教えるって決まってへんし。」
「でもなんで聖也君てそんな喋り方なん?関東の人なん?」
「ちゃうちゃう。俺生まれも育ちも京都の人え。」
「何それめっちゃ嘘っぽいんやけど。」
当然瞬介はあまり絡めないので、皆の盛り上がっている様子を食べて飲んで笑いながら、でも一応盛り下げないようには気を使いながら観察していた。
「おい羽柴。お前にクイズを出してやるよ。今から言う言葉を訳してみ。行くぜ。‘なあなあ。このあめちゃんのかんかんほかしといて。’」
はい?と瞬介は眉間にシワを寄せた。あめ?なんであめにちゃん?カンカン?オノマトペ?ほかす?ほっかむり?と意味もこの場の空気もわからずに瞬介はどんどん固まっていった。
「もー。からかったらあかんよ。瞬介君めっちゃ困ってはるやん。それやしそれ大阪人が言う言葉やで多分。あんな、正解はなあ、飴の缶捨てておいて。やでー。」
瞬介以外の皆が笑っている。瞬介は笑い者にされたのかと傷付いた。
「ごめんて。な、方言て面白いだろ?世界は広いよな!でも今日さー、この羽柴が俺んちに泊まるから女の子達誰も俺んちに泊まれないんだよね。だから皆飲み過ぎて倒れんじゃねーぞ。」
「そんな危ない所行くより野宿の方がましやわ。」
聖也はチャラかった。見た目通りチャラかった。ただ、聖也と同じ研究室だという友達は、まさに理系という感じの賢そうな、瞬介達の学校にもよくいるタイプのルックスだった。
そう。つまり聖也も実際は物凄く頭が良くて、現在京都の大学の4回生でありその上院生になろうとしている。しかもこのチャラさでだ。それどころか運動神経も良くて背も高くて、まさに天は彼に全てを与えた頂点の男だ。と瞬介は密かに思う。
だから瞬介は楽しいはずの飲み会の場で余計に嫌になってしまい、そして聖也のような男に自分の気持ちなんか分かるわけはないといじけ、それに飲み会はトークの戦場で馴染みにくくて段々と場違い感が辛くて先に帰りたかった。




