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おもいでにかわるまで  作者: 名波美奈
第三章
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その時水樹は、以前迷い猫ちゃんがちょこんと座っていた木の下で持ってきた入部届けを最後に瞳に映し、そして勇利への思いを断ち切る為だとしても結局涙を流していた。


3年以上の募る想いが込み上げて来る。出会ったのは学校の廊下で、その彫刻の様な顔面に息が止まった。それからはずっとからかわれてばかりだったけれど、それすらもくすぐったくて幸せだった。水樹は立ちすくんだまま紙を眺め、感傷に浸り泣いた。


さようなら勇利さん。ごめんなさい勇利さん。さようなら私の初恋。本当にあなたの事が大好きでした。あなたは私の青春の全てで片思いの時間は全部私の宝物です。こんな日が来ると思わなかった。あなた以上に好きな人が現れるなんて考えた事もなかった。


告白するって決めていたのに、きっとあなたには私の気持ちは知られていたのに、万が一にも恋人同士になった二人を想像した事もあったのに、私が今日告白するのはあなたではなくて、ごめんなさい勇利さん。そしてありがとうございました・・・。


涙が出ても、水樹にはこの涙の理由が何かわからない。泣きながら小瓶の蓋を開けて、几帳面に入部届けを折りたたんだ。


「えっ・・・。」


体が硬直した。あっ・・・どうして・・・嫌だ・・・。視界の中には明人がいた。目眩がして、水樹の顔面は蒼白になった。


「大丈夫立花さんっ。」


驚いた顔で明人を見た水樹は、顔色悪く目を真っ赤にしてグシャグシャな状態で泣いていた。


遺書?と明人は水樹の持っていた紙を引っ張りそしてそれを把握しようとした。けれどもそれは遺書ではなくて、かなり黄ばんだハンドボール部の入部届けの切り離された片方だった。


そしてその裏には、勇利が書いたメッセージと、水樹が描いたであろう勇利の似顔絵、それから台詞があった。


なんでこんなもの?なんでこれを見て泣いてるの?


明人は思いを巡らせた。


あっ・・・。


毎日目まぐるしく変化していく自分の新しい気持ちでいっぱいだった明人は、あの非常階段で水樹が勇利を好きだと嬉しそうに教えてくれた事をやっと思い出したのだ。そして全ての事が理解できた。


だから水樹は、何も求めなかったのだ。でも明人はいきなりの情報を噛み砕けずに何と声を掛ければ良いのかわからない。

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